少子高齢化による人材不足が業務改革のトリガーに
不二製油株式会社は、植物性油脂、製菓・製パン素材、大豆の3事業において素材の開発・生産・販売により、日本をはじめ世界の食を支える企業です。
2017年度のグループ売上高は3,076億円、営業利益は205億円。現時点では国内の売上高が約60%を占めますが、グローバル展開によってさらに成長の可能性が拡大しています。昨年米国Blommer社のグループ化により、世界でも第3位の業務用チョコレートメーカーとなりました。
しかし、今後も持続的な成長にあたって、国内における昨今の少子高齢化による労働力低下は、当社にとっても喫緊の課題となっています。
そこで、大胆な業務改善を図り、不必要な作業や、属人化した作業を削減し、効果的なIT活用により、業務改革を目指しました。
業務の棚卸⇒整理・整頓⇒IT化すべき業務をIT化する
下図は、当社の標準的な作業工程を示したものです。
まず、現在手作業で行っている業務のIT化を検討しました。
当社の業務改善の基本方針は、何でもITに頼るのではなく、まず、現状の業務の棚卸をして、①現状のまま ②変える(変えることで③のやめるにつなげる) ③やめる ④減らす の4パターンに整理整頓しました。その上で、IT化する部分はIT化し、業務改革を行いました。
ある工場がかかえる課題
ある工場での業務効率化のプロセスを見てみましょう。
上図は、ある工場での作業工程ごとの課題を示したものです。
①の工程では、製造実績や稼働実績等を日報ベースの紙で記録しています。データの記録漏れや、異常値があった場合にリアルタイムで把握できないことなどが課題でした。
また、異常が発生した際に、他部署とデータを共有するために、いちいちパソコンのあるところに行ってメールを送らなければなりません。場合によっては写真を撮ってメールに添付することもありますが、手間がかかり手遅れになることもありました。
②③の工程では、エクセルシートを作っているため、①の手書きのデータを転記しなければなりません。手間がかかるだけでなく、手書きの字が読みづらく、入力ミスにもつながっていました。また、エクセルシートに転記する作業は属人化しており、ちょっとしたひな形変更も簡単にできないという問題がありました。
④データの保管は、紙の状態でおこなっていました。必要なデータを探すのに時間がかかり、過去の経験をノウハウとして共有することができていませんでした。また、保管場所も問題でした。
XC-Gateをトライアル導入し、好感触を得る
これらの問題のソリューションとして、XC-Gate(エクシーゲート)の導入を検討しました。
XC-Gateは、普段使っているExcelシートをそのままWeb帳票に変換でき、現場の担当者が直接タブレットで情報を入力することできます。これにより、転記が不要になります。写真もタブレットで撮影してそのまま貼り付けることができます。
実際の導入に先立って、2018年8月に不二製油グループのある工場でトライアルを実施しました。
その結果、懸案事項だった4つの課題をすべてクリアできました。
実績の見える化、迅速な情報共有、転記ミス0、など、高い評価が得られました。
トライアルの後、XC-Gate導入による業務効果創出プロジェクトが本格スタートしました。
工場スタッフ、システム担当者とベンダーとが三位一体となり、進捗を確認しながら導入を進めていきました。
導入効果
XC-Gateを導入し、タブレットを用いた電子帳票に現場で記録をすることで、紙に記録⇒エクセルの書式のメンテナンス⇒エクセルに転記という工程が不要になりました。従来は、紙に記録する作業に1日480分かかっていたのが、180分に短縮されました。
また、入力時に異常値があれば、リアルタイムで把握できるようになりました。
作業時間をXC-Gate導入前・導入後で比較すると上図のようになります。
1月あたり約150時間、作業時間の短縮になりました。これは実働1日8時間×20日間として、1名相当分の削減効果です。人材不足の昨今において、貴重な1人を得たとも考えられます。
モデル工場での成功事例を横展開し、全社的な改革につなげる
タブレット端末で生産日報を作成。これによって、設備稼働分析や整備記録作成もできるようになりました。
この工場では、危険予知や事前の整備点検などの作業が属人化しており、なかなか標準化できませんでした。しかし、XC-Gateの電子伝票で、生産日報を作成していくことで、生産工程が見える化され、ノウハウをデータベース化して、他部門とも共有できるようになりました。
この工場を先行モデルとして、他の工場にも横展開していくことで、全社的に3,000時間/月(18人相当)の効果を目指しています。
業務改革のポイントとは
今回の業務改革のポイントは以下の3つに集約できます。
①IT未開拓領域に踏み込んで業務改善枠を広げる
現状の業務の中で、IT化できるのにまだIT化されていないところがあれば、そこが業務改善のポイントとなります。属人化していて標準化は難しいとされているところも含め、いかにIT未開拓の領域を開拓し、業務改善の範囲を広げるかです。それが、人手不足、時間的価値の創出につながります。
②ものづくりベースの部署との共創
ものづくりベースの部署は、現状維持的な発想になりがちです。そこからいかに脱却し変革するか。システム開発部門との連携が成功の鍵です。
③内田洋行、テクノツリーに感謝
誠心誠意、笑顔で対応いただけたことに、この場を借りて感謝を申し上げます。
今後の展開
- データ取得の電子化
- 現場での生産工程の見える化
- リアルタイム報告
が可能になりました。さらに、RPAと共存することで、今まで人に頼っていた定型的な作業の自動化にも着手したいと考えています。
まだまだIT化の未開拓領域があるので、これらをIT化し、情報機器または情報デバイスでできる業務の範囲を拡大する。そして、最終的には基幹システムとも連携し、業務の一気通貫を図りたい。
今後も、業務改革と時間的価値創出に貢献したいと思っています。