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【内田洋行ITフェア2015in東京】 変わる働き方 ~制度、ツール、風土を変えると 企業と人はどう変わるのか~

  • 2015年12月21日(月)
  • ワークスタイル
  • セミナーレポート
2015/12/21 [ワークスタイル,セミナーレポート]

毎日同じ時間に同じ場所に出勤し、年功序列で給与が上がる時代は終わりました。世の中の移り変わりに合わせ、働く環境を変え、多様な人材を織り交ぜてマネジメントし、新しい価値を生み出す必要があります。その働き方の多様性を支えるのが人事制度とクラウド。働く人と企業の利益を両立させる具体的な事例をご紹介します。

目次

  • なぜワークスタイルを変えなければならないのか
  • 大事なキーワードは「自立」と「多様性」の2つ
  • 多様な人事支援制度をどうやって作ってきたか
  • 人事制度の変化が優秀な人材獲得につながる
  • 実際に会って仕事をするためのオフィスづくり
  • チームワークの新拠点

内田洋行ITフェア2015 in 東京にて

サイボウズ株式会社
社長室フェロー 野水 克也 氏

大学卒業後、テレビカメラマンとディレクターを8年、家業である零細建設業の代表を経て、2000年に上場前のサイボウズに入社。広告宣伝、営業マネージャー、製品責任者、マーケティング部長を経て現職。現在は、数年後の事業を見据えたITの可能性を探し、また全国を回りながら先端事例の醸成とエバンジェリストとしての啓蒙活動を行っている。

今回は、変わる働き方というテーマでお話しさせていただきます。

サイボウズはグループウェアを開発する会社です。グループウェアとは集団やグループで仕事をする場合の効率を最大に上げるためのツールですが、我々はさらにチームワークのためのツールだと考え、「チームあるところにサイボウズあり」をテーマに掲げています。

出産や介護、その他の様々な理由で働けない時に、代わりに働ける人がいる体制を作るのも一つのチームワークだと考えています。

そうした我々の考え方をお伝えするため、『働くママたちに、よりそうことを。』という動画を制作したところ宣伝をほとんどしていないにもかかわらずYouTubeで150万回以上再生され、思った以上の反響があることに驚きました。

なぜワークスタイルを変えなければならないのか

最近、サイボウズのワークスタイルがメディアなどで取り上げられる機会が非常に増えています。

しかし、我々は女性の働き方を変えることだけを考えているわけではありません。働くのは男性も女性も同じ。つまり、人はみんなそれぞれ違うのだから、それぞれのペースに合せて働き方を変えられるようにするというのが会社としての考え方です。

そもそも、なぜワークスタイルを変えなければならないのでしょうか。

働くお母さんが増えた理由は、ITが発達して経済の速度が速くなり、働き方の効率が相対的に悪くなっているためです。OECD加盟諸国の34カ国中、日本の労働生産性は22位と非常に低いものになっています。

さらに、男性の平均賃金が下がっているので、共働き夫婦がほとんどを占めるようになり、共働きをしていない世帯の倍の数字になっています。

そうした社会背景の中で、理想の働き方を考えた場合、女性がセーブしている時は男性が働き、男性が疲れて充電したい時には女性が働くのが、一番無理のない方法だと捉えています。そして我々は、それをどうすれば実現できるかに挑戦しているのです。

大事なキーワードは「自立」と「多様性」の2つ

サイボウズも離職率が相当高い時期があり、一時は28%だったことがあります。社員を引き止めるため、給料を上げたり、業務を変えたり、いろいろ試みましたが、なかなか変わらなかった。そこで給与ではなく働き方を選択してもらう、100人いれば100通りの人事制度を作れば、社員が辞めなくてすむかもしれないと考えたのです。

サイボウズは人事制度において、「自立」と「多様性」の2つを大事なキーワードにしています。

自立とは、子どもの送り迎えのために働く時間をずらしたいと提案し、自分でルールを決めてそれをちゃんと守るということです。

働く時間が短いのはダメ社員という考え方はなく、それぞれが選択した結果を尊重しましょうということです。

マネジメントはどうしているのかとよく聞かれますが、「約束を守る」と「嘘をつかない」の2点を重視し、自分で決めた労働量をきちんとこなすことで、マネージャーはあらかじめリソースを把握できるようになっています。

評価制度は給与が上がるほど重視されるのが社外評価で、転職した際の給料はどれくらいになるかを基準にしています。

給与は年棒制で、通勤手当はありますが役職手当はありません。

具体的には、ウルトラワークと呼ぶ時間と場所の2軸で9象限からなるマトリックスを作り、それを元に給与額を変えています。

図版:cybozu「ウルトラワーク」

多様な人事支援制度をどうやって作ってきたか

休暇制度は、育児休暇と介護休暇が一人に対して最高6年取れます。子どもが2人いれば12年取れる計算です。

休暇中も制限付きでグループウェアへアクセス権を残し、会社とのコミュニケーションを継続できるようにしています。多少のロスはあるものの、すんなり業務復帰することができています。新しく社員を育てるのと、戻ってきた社員が力を発揮できるようにするのと、どちらが効率がいいかといえば後者ではないでしょうか。

さらに、35歳以下なら会社を休んでも6年以内は元の条件で無条件に戻ってこられる「育自分休暇制度」も設けています。制度を利用して戻ってきた社員は前よりスキルが多様化し、人間的にも成長していることが多く、非常にいい制度になっています。

他にも、社内で自由に部活動を作り、1人当たり1万円を支給しています。副業も自由で、実は私自身も現役カメラマンとして、年に数件社外で仕事を請け負っています。

独立支援制度も、会社を辞めてもサイボウズと関わりのある仕事をしてくれれば、会社のビジネスが拡がるという考え方でやっています。

こうした制度をどうやって作ってきたのかともよく聞かれますが、社員が希望することは問題がなければ基本的にすべて受け入れるようにしています。

人事制度の変化が優秀な人材獲得につながる

人事制度を変えたことによる一番大きな効果は、優秀な人材を確保できたことです。

グループウェアの国内シェアは、2位がGoogleで以下はマイクロソフト、セールスフォースという、世界で名だたる超巨大企業で占められています。社員の年収も何倍も違いますが、サイボウズの人事制度が評価され、それらの会社から転職してくる例もあります。

こうした働き方がこれまでなぜできなかったというと、会社でなければできない仕事があまりにも多かったためです。

弊社には紙の書類が一切なく、会議から伝票の処理まで全てオンラインで可能にしています。

逆に我々が考える働き方は、クラウドがなければできませんし、クラウドを使うことで、働き方の自由と生産性の両立はできると考えています。

サイボウズはここ3年で、離職率が最低3.8%まで下がりました。ですが、数字を減らすのは目標では無く、減りすぎたと思っているほどです。会社には採用できる社員のキャパシティがあるので、成長性と調節しながら社員の幸福の両立をうまく行いたいと考えています。

実際に会って仕事をするためのオフィスづくり

自宅勤務ができるなら、オフィスは小さくしていいと思われそうですが、サイボウズはあえて日本橋駅直結の広いオフィスに引っ越しをしました。どこで仕事をしてもいいなら、仕事をしに来たくなる環境を整えようという考え方です。

BIG HUBというコンセプトで作られたオフィスは、社員だけでなくお客さんも来たくなる場所、むしろ人と会うための場所を目指しました。全体の4割が来客スペースで占められています。

どこにいても働けるからこそ、実際に会ってコミュニケーションする、リアルオフィスの存在は重要になりますし、オフィスの価値があるのだと考えています。

チームワークの新拠点、サイボウズ様東京オフィス

サイボウズ様東京オフィス

100人いれば、100通りの仕事ができること。それは、社員のためだけでなく、会社の生産性を上げる活動でもあります。理想は社員が好きな場所で好きな時間に仕事をして、しかも会社も人としても成長できる。それが我々の目指している働き方なのです。

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