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【Super Cocktail Day】 企業は進化するITといかに向き合っていくべきか

2018/5/22 [ERP,セミナーレポート]

企業経営や個人の生活において必要不可欠となったIT。情報戦略から働き方改革まで、デジタルトランスフォーメーション時代を展望しながら、企業は進化するITとどのように向き合えばよいのか。先端IT技術は事業戦略の領域で広く活用され始めています。また生産性向上においてはRPAへの期待も極めて高い。コンサルタントの立場から、客観的事実や事例を交えて分かり易く解説します。

目次

  • システムの導入には、「Why=目的」が大事
  • 目的と手段を間違わない
  • ITについて興味を持とう
  • 情報の2面性を受け入れよう
  • 最新のテクノロジーも、繰り返す歴史の延長でしかない
    …ほか

Super Cocktail Day にて

みずほ情報総研株式会社
ソリューション第1部 次長
太田 智久 氏

みずほ情報総研株式会社 セールス・マーケティング部門で、国内外ERPベンダ一とのアライアンス企画・事業開発を担当。みずほ銀行との法人マーケット・グループ連携推進責任者、製造業向けソリューション・グローパルソリューション・BIソリューション・クラウドソリューション責任者を歴任。現組織においてコンサルティングとプロジェクトマネジメントノウハウを融合させた「PMO支援サービス」を立上げ、本サービスの創始者であり責任者。

システムの導入には、「Why=目的」が大事

私はコンサルタントとして、企業のITに関する課題解決をお手伝いしています。具体的には、企業の基幹システムつまりERPの入れ替えにあたってのコンサルティング業務が主な仕事です。ERPとは、人・モノ・カネをきちんと統合させることにより、業務の効率化と業績アップを目指すものですが、コンサルティングを行う際に大変気になっていることがあります。

それは、ERPを導入しようという企業の担当者の多くが、どんなシステムをどのように導入するかといった「What」「How」ばかりに言及し、「Why」、つまり目的が見えていないこと。先端テクノロジー等については「トレンドだから導入する」というのも間違いではないかもしれませんが、ERPの場合、導入して何をしたいのか、本質的なことをきちんと、事前に考えておく必要がある。

システムの導入に限らず、あらゆることに対して、「なぜ?」と問うことは大切だと思います。

目的と手段を間違わない

余談になりますが、私の趣味は湖で鱒を釣ることです。大きな鱒を釣るためには、魚の群れがどこにいるかを知る必要があります。群れを探すために、私はアメリカ製の高価な魚群探知機を買いました。GPS機能はもちろん、水中の3D写真が見ることができたり、地図がダウンロードできたり大変高機能なものです。

さて、ここでさきほどの「Why」の話です。

私が、この魚群探知機を欲しかった理由は何でしょうか。買ったのは目的、手段のどちらでしょうか。

私の課題は「魚の群れがどこにいるのかわからない」ことでした。その課題を解決し、「魚のいる場所を知る」ことが私の目的でした。「魚群探知機を買うこと」は、その手段であり、目的ではありません。

当たり前と思うかもしれませんが、コンサルティングの場面では、手段と目的を取り違えているクライアントさんは少なくありません。

「なぜ基幹システムを切り替えるのですか?」と問うと、はっきり答えられない。「保守切れだから」「トレンドだから」などの答えは返ってきますが、「導入によってこの課題をこう解決したい」と明確な目的を言えない企業が意外に多いのです。

ITについて興味を持とう

最新のITは想像以上にすごいです。皆さんには、ITにもっと興味を持ってほしいと思います。

コンサルティングに伺うと、社長さんから「実はシステムとかコンピュータって苦手なんですよ」と打ち明けられることがよくあります。この社長さんも気の毒ですが、会社も気の毒です。ITがなければ今や会社は回っていかない。しかし社長は、自分でもよくわからないものに多額の投資をするかどうか、判断できない。

正しい判断をするためにも、もっとITに興味をもち、正しく理解をしてほしいのです。

情報の2面性を受け入れよう

物事には表があれば裏があります。たとえば「抽象的」VS「具体的」、「右脳」VS「左脳」、「ディティール」VS「コンセプト」など。

裏表を見ることで本質がわかることがあります。双方を行き来しながら考えることが大事です。

たとえば、AIに関する情報には、「煽る」もの、「鎮める」ものがあります。

「AIで人間の仕事が奪われるのではないか」「AIが人間より賢くなって人間を滅ぼすのではないか」といった論調は「煽る」ものです。これに対し、「AIがどんどん進化して生活が便利になる」「労働力不足も補える」といった論調は「鎮める」ものです。

この両面を見て、自分はどうするかを考えなければなりません。

情報には二面性があるのです。片側だけ見ていると本質を見失います。興味を持って情報を受け入れ、その二面性を受け入れる。そうしないと、投資にせよ何にせよ、正しい判断はできません。

最新のテクノロジーも、繰り返す歴史の延長でしかない

AIの能力がどんどん高まり、2015年にはネズミの脳を越え、2045年には人間の知性を超えると言われています。それによって人間の生活に大きな変化が起こるという概念をシンギュラリティ(技術的特異点)と言います。

今、よく聞かれる、IoT、ビッグデータ、AIなどの用語ですが、概念としては実はそれほど新しいことではないと捉えることで、本質が見えてきます。

たとえばIoTは、単純化して言えば、センサー技術によって情報をインプットすること。製造業の人は昔から当たり前に使ってきた技術です。昔と違うのは、センサーで集めた情報がインターネットで取り出せるようになったことです。

IoTで集まったデータをクラウドやストレージに保存していたのがどんどん大きくなったのがビッグデータです。膨大なデータを有効活用するために注目されているのがAIです。

ビッグデータやIoTと言われるとよくわからないと思う人もいるかもしれませんが、基本的には、インプットとプロセスとアウトプットであり、情報処理の世界では前からあった話です。そういうふうに考えると、なるほどそういうことか、と納得できると思います。

システム構成における「集中と分散」も最近よく聞きますが、新しい概念ではありません。汎用機の時代は集中型、2000年頃のクライアントサーバー型の時代は分散型でした。そして今、クラウドコンピューティングの時代になり再び集中型になった。これもまた分散の方向に向かおうとしています。歴史は繰り返すのです。

今のトレンドは、どこに位置するのか冷静に見極める

ガートナーのハイプ・サイクルは、新しい技術が市場に投入されたとき、私たちがどういう期待を持ち、どんな反応をするかを示したものです。これによると、新登場したばかりの頃は、色々な人が持てはやし大人気になり、期待値は最高潮になります。ところがあっという間に期待値が下がり、幻滅期に入る。その後、啓蒙期を経て安定していく。

では、今新しく出ている技術は、どの段階に当たるのでしょうか。

最近、急激に期待値のピークを迎えつつあるのがRPA(Robotic Process Automation)でしょう。しかしまだまだ伸びると思われます。一方、ビッグデータ、クラウドコンピューティングはすでに幻滅期に入っています。しかし、具体的な実績が作られ、安定していくのはここからです。

こういうサイクルを知った上で、リスクはあるけど新しいものにいち早く飛びつくのか、しばらくは傍観するのか。企業戦略と合致しているのであれば、新しいものに飛びつくのも間違いではありません。しかし、自分の会社に今は必要ないと判断するなら、他社の様子を見てから導入しても遅くはないかもしれません。

決して、「新しいから」という理由だけで飛びついてはいけない。やはり目的をしっかりと意識することが大事なのです。

IT活用が、生産性向上以外に生み出せる価値を考える

ある大企業の経営者の話です。とても勉強家で、AIについても本をたくさん読んでおられました。この方が、「AIが生産性向上に役立つことはわかったが、私がしたいことはCSの向上だ、どうしたらよいのか」とおっしゃられました。この方の頭の中ではAIとCSはつながっていないのです。

風が吹けば桶谷がもうかるではありませんが、AIなどのテクノロジーによって生産性が向上することによりESが高まり、それがCSも向上にもつながる。こう考えるべきです。

ユニクロはセルフレジを導入しました。顧客は、店員を介することなく、品物を買い物カゴに入れたままセルフレジ機で自動精算することができます。

これは、人件費削減や生産性向上だけが目的ではないのです。

どういうことかというと、このセルフレジは、多言語対応であり、最近急増している外国人客が外国人の店員と会話をしなくてもいいので言語の壁を打ち破ることができるのです。

あるデリバリーピザの会社では、スマホでピザを注文すると、デリバリー担当者の顔写真や、デリバリーのバイクが今どこにいるかをリアルタイムで見ることができるシステムを導入しました。まさにこれらの事例こそ、企業の競争戦略にITを活用した事例だと思いませんか。顧客は、配達員の顔がわかっているので安心して受け取れるだけでなく、待ち時間をワクワクしながら待つことができる。普通はイライラする待ち時間をワクワクする時間に変える。これも、テクノロジーが生産性向上以上の新しい価値を生み出した例です。

生産性向上はもちろんですが、それを越えて、企業としていかにして新しい価値を作れるか。そこまで考えるとITは難しいことではなく、楽しいことになってくる。そう考えています。

働き方改革とAIの関係性

石川啄木の詩に

はたらけど はたらけど
猶わが生活(くらし)楽にならざり
ぢっと手を見る

というのがあります。

この詩の「楽(らく)」とは、当然お金のことであることは、だれでも知っています。「働いても働いてもお金にならない」と嘆いているのですが、現代ではちょっと感じ方が違うように思います。

今の若い人たちは、「楽(らく)」とは楽しいのほうのラクだと思っている。

私の部下も「楽しいことがしたい」と言います。そういう世代の人たちに働いてもらうには、単に生産性を上げさせるだけではなく楽しく仕事をしてもらうことも、とても大事です。

若い人たちだけではありません。最近は、私のまわりにいる40代も50代も同様に「楽しく働きたい」と言っています。

ところで、20代にとっての楽しい仕事と、30代、40代にとっての楽しい仕事とはどのような仕事でしょうか。そう考えると、AIが私たちの仕事を奪うなどという発想よりも、AIを使っていかに仕事を楽しくするかという発想に思考が切り替わる訳です。

実は、“ぢっと見る”のは手ではなく、AIなどの先端ITなのかもしれませんね。

デジタルトランスフォーメーションへ

デジタルトランスフォーメーションとは、「ITの浸透が、業務とシステムがシームレスに融合していく」という概念で、ここに至るには3段階があると言われています。

第1フェーズ:IT利用による業務プロセスの強化
第2フェーズ:ITによる業務の置き換え
第3フェーズ:業務がITへ、ITが業務へとシームレスに変換される状態

今、先進的な企業は、第1〜第2フェーズに向かっています。今後はすべての企業が、デジタルトランスフォーメーションを余儀なくされるでしょう。そうしなければ、IT化の波の中で生き残ることは難しい。

いきなりすべてをIT化しようとしない

日本のホワイトカラーは諸外国と比べて生産性が低いと言われています。仕事を奪われたくないという“既得権意識”から、権限移譲ができず、多くの業務が属人化していることもその一因だと思います。

RPAは、属人化した作業を可視化し、効率化するために大変有効なツールです。しかし、流行のRPAであっても何のために使うのか、その目的を考えなければ導入しても有効活用はできません。

成功のコツは「いきなり全部を自動化しようとしない」ということです。おぼえておいて下さい。

若手を育成する

デジタルトランスフォーメーションのためには、大量のITエンジニアが必要です。しかし日本は深刻な人材不足で、日本企業の実に75%がIT要員不足を感じています。

しかし、「人がいない」と嘆くだけでなく、きちんと教育をすることも必要です。システム要員を外から雇うよりも自社の業務部門の人材にシステムのことを勉強させて育てるほうが早いかもしれません。また、そういった流れになってきています。

ところで、私の働き方改革と成長についてお話ししたいと思います。

私の部署は、私が自分で立ち上げたPMO支援サービスという事業を担っています。先日、新たなセールスツールとして、プロモーション動画を作ろうという話になり、当然私が作るものと思っていたら、2人の若い女性社員が「私がやります」と手を挙げてくれました。

どきっとしました。私の仕事が奪われると一瞬思ったぐらいです。でもすぐに思い直し、彼女らに任せることにしました。結果的に、彼女たちは素晴らしいプロモーション動画を作ってくれました。これをきっかけに私は若い人にどんどん仕事を任せることにしました。これによって若い社員たちも大きく成長しましたし、私も成長することができました。

これぞ私の考える働き方改革です。

働き方改革は、トップが自分自身で断行しないと浸透しません。

まさに、働き方改革を進めるためには、トップ自らが働かせ改革をすべきなのだと感じています。

まとめ:ITとの向き合い方

「独創的な創造力が必要だ。それが本当の進化をもたらす」と言ったのはアインシュタインです。

ITは所詮道具であって目的ではありません。

ビジネスの世界において、IT活用の目的は、企業戦略実現のためのはずです。この目的のために、ITを積極的に使う。

ITとの向き合い方としては、これに尽きるのではないでしょうか。

ITと企業が真に融合することで、より豊かで価値のある仕事や会社、更には豊かな社会が実現することを心より願っています。

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