物流に特化したシンクタンク
株式会社日通総合研究所は、1961年に創業したシンクタンクです。日本通運のグループ会社であることから物流に特化した「コンサルティング」「調査・研究」「研修・セミナー」を行っています。物流という切り口でのシンクタンクとしては、日本で最も歴史のある会社です。
今回は、働き方改革の一環として「業務の見える化」や「生産性向上」を検討している方々のために、当社製品の「ろじたん」を使ったソリューション内容と、お客様の取り組み事例についてご紹介いたします。
課題解決のポイントは「仮説立て」
2018年8月16日付の日経新聞で「データ社会3.0『考える組織』が生産性を高める」という記事がありました。プロジェクトの粗利益率にはリーダーの能力が大きく影響しているという仮説のもと、成果を上げているリーダーの行動を2週間リサーチしたところ、実績を上げているリーダーは、「計画性」、「コミュニケーション力」、「早めの方針決定・早めの調整」という3つの要素を備えていることがわかったという内容でした。
ポイントは、最初に「仮説を立てる」ということです。弊社でも、「ただ現状把握をするのではなく、仮説を立ててください」ということを常にお客様に申し上げています。
課題の解決にあたっては、仮説立てが大変重要なのです。
働き方改革を取り巻く状況
働き方改革への取組で最も重視するのは「従業員のモチベーション向上」、次いで「人材の定着」でした(下図)。昨今の人材不足を反映している結果だと思います。一昔前なら、「生産性の向上」が一番だったのではないでしょうか。
働き方改革のために取り組んでいる内容としては、「長時間労働の是正」が約8割でトップです(下図)。
弊社が主に目指すのは、上図のグリーンで示したところ、「業務改善」による生産性の向上です。
多くの企業で、トップダウンで働き方改革プロジェクトを立ち上げて、業務改善に取り組んでいることと思います。プロセスとしては、業務の可視化⇒課題の抽出⇒改善施策の策定⇒特定部門での先行実施⇒全社展開 というのが一般的です。
まず、「業務の可視化」ですが、社員にヒアリングを行いその結果をデータ化するといったことがよく行われるのではないでしょうか。しかし、このプロセスが大変なため、働き方改革が進まない。
弊社が提案する「ろじたん」は、まさにここを解決するためのツールなのです。
簡単に、すぐに、低コストで導入できる「ろじたん」
「ろじたん」は、スマホアプリを使って、倉庫など作業現場の作業時間を計測するツールです。作業スタッフは、作業中にスマホに表示されたボタンをタップするだけで、今何の作業をしているか、作業履歴を蓄積することができます。作業中に、ボタンをタップするのを忘れることがないよう、一定時間ごとにアラーム機能で通知するようになっています。作業スタッフの作業別の歩数や位置情報もわかるので、無駄な動きがないかチェックをすることができ、倉庫のレイアウト改善の指標にもなります。
これらのデータはweb上で一括管理でき、施設ごと、作業項目ごと、スタッフごとの作業時間を閲覧することができます。さらに、分析ツールを使えば、「スタッフ別タイムテーブル」「時間帯別作業比率」「スタッフ別・作業別歩数」といった表やグラフを簡単に生成することができます。
もともとは、物流現場での利用を想定して開発されましたが、物流以外の工場、事務所、病院、店舗、飲食店、キッティング、メンテナンス、介護施設等からも引き合いをいただいています。
必要なのは、スマホとパソコン、インターネット環境だけ。簡単に、すぐに、低コストで導入できることが、「ろじたん」の最大の特徴です。また、スマホ、データ通信用端末(ポケットWi-Fi)等の機材はすべてレンタルしていますので、初期費用がほとんどかからず、また、たとえば2週間だけ、半年だけ使いたいといった要望にも対応できます。長期レンタルして、日報替わりに使うというケースもあります。
「ろじたん」を使えば、作業日報や作業コストの算出も一瞬にしてできます。
最近では、「ろじたん」を使って定型的な業務を洗い出し、どの作業をRPAで自動化できるかといったコンサルティングも行っています。
「ろじたん」を生産性向上やモチベーション向上に活用
「ろじたん」は、どのような目的で活用されているか、これまでの事例から以下にまとめました。
管理部門・間接部門では、「モチベーション向上」や「生産性の向上」を、現業部門では、「管理レベルの底上げ」「生産性の向上」を目的として活用されています。
「生産性の向上」は管理部門・間接部門においては、低価値・無価値業務等の抑制や排除、重複業務の削減等が目的となります。現場部門においては、自動化設備の投資対効果を検証、手待ち時間の削減、ライン当たり歩数を指標としたレイアウト改善等が期待されます。
事例1:管理・間接部門での導入事例
ここからは事例を見てみましょう。
事例1は、管理・間接部門での導入事例です。
取扱い商材は化学品(生産財)、計測人数は15名、計測期間30日間。「ろじたん」導入の目的は「モチベーションと生産性の向上」でした。
こちらの会社では、管理・間接部門の長時間残業が常態化しており、モチベーションの上がらない作業が増えていました。
モチベーションの上がらない作業の比率を下げ、価値の低い作業、重複業務を排除することを目指しました。
業務の実態調査を行う前に、「不用な資料や会議に時間を取られているのではないか」という仮説を立て、それに基づいて、「ろじたん」によるデータ収集と個別ヒアリングによって業務実態の把握を行いました。
「ろじたん」では、何の作業にどれだけの時間がかかっているかを見える化しました。個別ヒアリングでは、価値を感じる業務、モチベーションが上がる業務は何かを聞きました。
価値、やりがいが低く、かつ作業時間が長い業務が真っ先に改善するべき業務です。それが上図のとおり、明らかになりました。
続いて、課長の業務実態を調べたところ、80時間、100時間など、長時間の残業が常態となっていることがわかりました。
「ろじたん」によって、業務内容を分析すると、日々の業務に追われ、本来のマネジメント業務は全体のわずか16%でした。また、価値を感じない業務が55%を占めていることが明らかになりました。低価値の業務を「なくす・減らす・変える」ことで、業務改善をし、残業時間を削減するという方針にたどりつくことができました。
事例2:物流の現場部門での導入事例
この事例の対象となったのは、坪数約2万坪の倉庫です。取扱い商材は精密機器および関連製品。計測人数は110名、計測期間は30日間。
こちらの会社では、いくつかの倉庫を統合したことにより作業者管理が煩雑化し、物流倉庫の収支状況が悪化していました。そこで、黒字化へ向けた作業コストの圧縮を目的として業務改善に乗り出しました。
「チーム別の縦割り作業による無駄が生じているのではないか」という仮説を立て、チーム別に作業時間を計測しました。
110名の作業スタッフを11のグループに分け、作業内容を分析したところ、あるチームでは、1日1.6時間、他のグループが使用する箱の組み立て作業をしていることがわかりました。この作業を、他のグループの手待ち時間を利用して分担することで、もとのチームは1.6時間を別の作業に使うことができ、他グループは手待ち時間を削減することができました。
同様に、他にも各グループの空き時間を使って分担できる作業はないか探し、人員の削減や空き時間の削減を実現しました。
また、土曜日の人員配置が作業量に対して多すぎることもわかり、土曜の人員を削減しました。
これらの施策によって、作業人件費を約20%削減することができました。
RPA導入を見据えた活用も
「ろじたん」は、2015年10月からサービスを開始し2018年時点で丸3年となります。現在250拠点に導入していただいています。うち、事務計測のみの案件は44拠点、全体の約2割は、RPA導入を見据えて、管理・間接部門のみの計測を行いたいという企業様です。
ユーザーの2割は日本通運のお客様で、残り8割は日本通運のお客様ではない企業様です。それだけニーズがあるのだと考えています。
「ろじたん」の導入は、作業スタッフ30名前後の拠点がボリュームゾーンです。
利用料金は、30名前後の拠点の場合、年間契約の場合月額2万4千円が基本料金です。90日までのスポット契約なら、1回9万6千円で、負担にならない価格設定としています。
導入にあたっては、オプションで計測内容の設定のコンサルティング、現場スタッフや管理職への使い方指導も行っており、通常は導入の決定から3週間ほどで稼働できるようになっています。
これまで管理しづらかった、スタッフの作業時間を簡単に把握することができ、生産性の算出やコスト管理にもお役立ていただけます。倉庫だけでなく、さまざまな施設、事務所等でご活用いただけることと思いますので、ぜひご相談お待ちしております。