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【福祉コラム】 国の動向と福祉及び介護職員の働き方改革

2019/10/3 [福祉,コラム]

国の政策である「働き方改革」は、福祉・介護施設の労働環境改善、職員の離職率改善に大きな期待が寄せられています。この機会に福祉業界全体で労働環境の改善に取り組み、魅力のある仕事としてプラスのイメージを社会に根付かせることが重要ではないでしょうか。

目次

  • 働き方改革のポイント
  • 労務法規と3K職種を考える
  • 働き方改革を通して労働環境を考える機会に
  • 福祉業務の魅力を伝える職場に

淑徳大学 社会福祉学科 教授
結城 康博 氏

1969年生まれ。法政大学大学院修了(経済学博士、政治学博士)。ケアマネージャー他介護系の仕事に従事。また、社会保障審議会等の委員を務める。2007年より淑徳大学総合福祉学部准教授。2013年より現職。著書に、『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から』『孤独死のリアル』など多数。く丁寧な解説には定評がある。

働き方改革のポイント

福祉施設職員における働き方改革の流れは、これまでの労働環境を好転化する大きな機会と捉え、特に「介護職」のイメージ悪化の是正に大いに期待が寄せられる。

今回、筆者が注目している働き方改革の大きなポイントは、(1)非正規雇用の待遇差改善、(2)長時間労働の是正、(3)柔軟な働き方ができる環境づくり、(4)賃金引き上げと労働生産性向上、(5)再就職支援と人材育成、(6)ハラスメント防止対策、以上6点である。

これらの取り組みが本格的に全ての福祉労働現場で実施されれば、福祉マンパワー(介護職員)の離職率の改善も期待できると考える。

労務法規と3K職種を考える

一般的に福祉施設の介護職員を中心に「3K職場」と社会では認識され、「きつい」「きたない」「きけん」と言われている。これらに併せて「くらい」「くさい」など「5K職場」とまで言われることもある。

福祉施設の介護職員は、労働条件が厳しく重労働、排泄介助やおむつ交換など、綺麗なイメージとはかけ離れている。感染症のリスクも高く、腰痛など身体に危険な職業など、介護職員らは心身に疲れて、暗い表情などが印象深く社会で認識されていると考えられる。

しかし、これらの「きつい」には二つの意味がある。一つは文字通り「夜勤」「不規則勤務」「認知症高齢者の対応」など、他職種と比べて介護職そのものの「きつさ」であろう。

一方、もう一つは「労務法規」が守られていない、例えば「決まった休みが取れない」「サービス残業が多い」「上司からのパワハラ」「極端に夜勤回数が多すぎる」といったような「きつさ」である。特に、多くの介護現場では「人」が足りないため、これらの「きつさ」が常態化してしまうことだ。

厚生労働省北海道局がまとめた資料によれば、2017年介護労働者を雇用している160介護事業所に対しての監督指導の結果、78.8%の126事業所で労働基準関係法令違反の是正を実施された。具体的には一事業場で複数違反も珍しくなく、➀割増賃金の支払に関する事項 70件(24.5%)、➁労働時間に関する事項 57件(19.9%)、 ➂健康診断の実施に関する事項 47件(16.4%)、➃賃金台帳の調整・記入に関する事項 27件(9.4%)、➄就業規則の作成・届出に関する事項19件(66.6%)となっている。

「労務法規」が守られていない「きつさ」は、組織的な要因であり、経営者や管理職の努力次第では是正できる「きつさ」だ。多くの介護現場では、これらの「きつさ」を整理して考えず、すべて仕方のないことと片づけてしまっている現場も少なくない。

働き方改革を通して労働環境を考える機会に

現在、全産業において「ブラック企業」といった労働環境が社会問題視されている。福祉施設現場も「ブラック企業」と呼ばれる職場が多々見られる。

例えば、施設系介護現場では、人員配置ギリギリの環境で介護業務が遂行されている場合が多く、中間管理職らは24時間体制の介護サービスを提供するため、介護職員やヘルパーらの「出勤・休日・早番・遅番・夜勤」などの「シフト」を組むことが重要な職務となっている。

しかし、目先のシフト作りに追われてしまい、「有給休暇」の取得を安易に認めない介護課長や主任も珍しくない。特に、このような管理職は「新人時代、私のもそうだったから」と、厳しい職場であれば安易に「有給休暇」を取ることはできなといったことが当然であるかのような時代錯誤的な考えを抱いている者もいる。

たとえ、介護職員に限らず有給休暇の取得を認めるか否かを迷った場合でも、その理由を『詳細』に聞いて判断する管理職も少なくない。中には勤務「シフト」を組む際、「若い職員」よりも「先輩職員」の休暇を優先させるといった、体育会的な発想を抱いている者も未だにいる。

福祉業務の魅力を伝える職場に

本来、福祉の仕事は、「感謝される職業」「一般的に事務職員より給与が高い」「高齢者の生活に寄り添えて心が癒される」など、プラスのイメージを社会に根付かせ、プラスのイメージを先行させていけば、仕事自体は魅力のあるものである。

確かに、全産業に比べ賃金水準が低いといった問題も人手不足の大きな要因ではあるに違いない。しかし、実際は管理職によるパワハラ、労務法規違反の対応など、福祉現場の労働環境のマイナス面が人材不足の要因ともなっていると考える。

これまで福祉施設の人材不足問題は「低賃金」であるといった理由のみで、現場の労働環境の悪化に直視してこなかった福祉業界全体の流れであった。むしろ、これらの実態に目を背けてきたともいえる。

しかし、今回の働き方改革を通して、「有給休暇」取得などの義務化など、労働環境の改善に取り組むことが義務付けられた。

そのため、福祉現場の人材不足の1つの要因は、職場環境の悪化であることを福祉業界全体が認識する大きな機会となることを期待したい。それらが改善していけば、一定のマンパワーの離職率に歯止めがかかると考える。

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