物流コストの実態
物流コストの削減は、どのお客様を訪問しても必ず話題に上るテーマです。売上げに対して物流コストはどの位を占めるのかと尋ねると、たいていのお客様は何%と把握されています。業種にもよりますが、平均でおおよそ4.7%。バブル崩壊前の6.58%に比べると数字は低くなり、だいたい5%前後を推移しているようです。
業種別でみると、比率が高いのは通販平均12.09%、食品(要冷)平均8.57%。通販は個人のお客様を対象としたバラ出庫ですので、1個あたりの物流コストは高くなります。要冷蔵の食品はどうしても設備系のコストがかかります。
逆に比率が低いのは、医療品製造1.29%、量販店平均2.50%となっています。これは1個当たりの売上単価が高いことが、理由と思われます。
物流コストの内訳を知り、それぞれにいくらかかっているかを把握する
みなさん物流コストを下げたいとおっしゃいますが、ただやみくもに「コストを下げたい」だけでなく、まず、何にいくらかかっているのかを明確にする必要があります。
ひと口に「物流コスト」と言っても、その内訳を見ると、輸送費(2.7%)、荷役費(0.7%)、保管費(0.7%)、その他(情報費、包装費など)(0.59%)。物流コストの約6割以上が輸送コスト(輸送費+荷役費)ということがわかります。
物流業務における企業の主な課題は、次の5点です。
(1)物流コストを下げたい。
(2)過剰在庫、不良在庫がある。⇒保管費増に
(3)アウトソーシングを考えたい。⇒コストの内訳が見えづらくなる
(4)品質管理の要求が厳しくなった。⇒管理コスト、物流コスト増に
(5)多品種少量生産の時代となり、少量出荷が増えた。⇒1個当たりの物流コスト増に
「物流コスト削減策」について企業にアンケートを行っていますが、10年来、毎回1位になるのが「在庫の削減」です。しかし、在庫の削減は、実は物流部門の問題ではありません。営業の仕入れの読みの問題や、生産部門の生産計画の問題です。まずそこを認識しなければなりません。
「物流管理会計」とは何か
物流コストは、一般会計にはなかなか出てきませんが、物流会計ということを意識することが削減の第一歩です。前述のとおり、物流コストは、売上の4.7%を占めていますが、この内訳を把握している企業は少数です。とくに、運送費、荷役費など外注しているものについては、請求書の金額しか把握できていないのではないでしょうか。ここを把握するのが大きなポイントです。
(1)人件費、(2)輸送費、(3)保管費、(4)情報システム費、(5)個包装資材費、(7)その他に大別されます。
物流コストを2%下げようというとき、項目ごとの実態を把握し、どの項目を削減対象にするかを明らかすることが最初のステップです。
次に、一般会計項目のグロスの金額を、物流会計項目の(1)〜(7)のどれにあたるか、割り振ります。
そして、各項目の対売上費を見て、高いパーセンテージの項目に注目します。
たとえば、この例の場合は、配送費61.2%、外注費(人件費)29.6%、建物賃借料11.0%が、物流コストを圧迫している要素です。ここが削減の検討の対象となります。パーセンテージの低いアルバイト0.3%や通信費0.1%を下げても全体にはほとんど影響はありません。
このように、物流コストの内訳を細かく分析し、何がコスト高の原因になっているかをつきとめることが「物流の見える化」です。
大枠ではわかっていても、管理会計上の実態は把握されていないお客様が多いです。原因がわからないと、絶対に解決することはできません。
情報を見える化し、最も効果的な項目にフォーカスする
実態を見える化して、一番効果が高いところにピンポイントで対策を打つことが重要です。
たとえば、「在庫が多い」という問題を解決する場合、ただ「在庫を減らそう」ではなく、「どの商品が?」「どこの拠点の?」と原因をつきつめていく。
「輸送運賃が高い」ことが問題であれば「どの業者の?」「どの地区の?」「どの得意先の?」と絞り込んでいく。
実態を明らかにしたら、コスト比率の高いところをピップアップし、上位3位だけやろう、他は捨てよう、という判断が重要です。すべてのアイテムやすべての拠点、得意先を対象にすることは無理。全体に対して影響力の大きいところだけに焦点を上げることがポイントなのです。
では、「物流コストの見える化」の手順を整理しましょう。
これらの作業をすべてエクセルで行うのは至難のワザです。
内田洋行の「MOTION BOARD」は、「Super Cocktail」等のアプリケーションで一元管理していだいている情報を分析し、見える化するBI(Business Intelligence)ツールです。RFM分析、ランキング分析、ABC分析などがマウス一つで可能です。また、データを地図上に表現できる地図機能も備えているので、拠点ごとの売上やコストも簡単に見える化することができます。
「見える化」するということと、ただ見るということは違います。
大切なことは、データをビジュアル化することで、どのような気づきがあるかということです。何が悪さをしているのか、リアルタイムで現状を収集し管理する。それなくして物流コスト削減は実現しないのです。