1点目は、オンラインの受注が止まらないための見直しです。
トーラク本社にはEOSシステムがあるのですが、このサーバーがよくフリーズしていました。復旧に時間がかかると、遅れや欠品に事態につながります。
このトラブルメーカーであるEOSシステムを効率よく機能させるために一からシステムを立て直しました。EOSシステムのデータセンターが得意先から取った注文をIIJと連携させます。伝発名人とつないで、出荷データと伝票の出力を同時に出荷センターに指示します。これでスーパーカクテルと受注を受けるデータセンターが効率よく結ばれ、受信後から出荷指示まで延べ8時間の業務改善ができるようになりました。
2点目は、システム全体が止まらないための見直しです。
クラウド環境に特化して、将来の業務改善を盛り込んだバージョンアップにつなげるための環境作りを目指しました。例えば、データセンターでシステムを稼働することで、安全性、信頼性を向上させ、業務を継続するためのBCP対策も同時に行おうと考えました。
3点目は運用を止めないための見直しです。
以前はネットワークの中心が本社にあって、災害トラブルあれば全体のネットワークが止まってしまいました。ここを改善しないと、スーパーカクテルがクラウド環境にあっても運用が止まってしまうことになりかねない。安全性を高めるために、ネットワークの中心的な機能をデータセンターに移しました。データセンターを中心としたネットワークで事業の継続性を確保しつつ、ネットワークの契約や設計の方法も変えました。これにより月額の通信費を約50%カットできました。
クラウド化成功の鍵はパートナー
クラウド環境に対する社内の不安は理解できます。「目の前にサーバーがない」とか、「ネットワークが切れたらすべて終わりだ」とか、「お金を出して構築しても物理的に環境を感じることができない」とか。確かにそうなのですが、クラウドに比べて自社環境が弱い点が3つあります。
(1)クラウド環境が持つ安全性を自社で構築するのは物理的に困難。
(2)クラウド環境が持つ管理・サポート体制を自社で作ることはなかなかできない。
(3)クラウド環境でできる緊急時のシステムの早期復帰も自社環境ではたいへんむずかしい。
クラウド環境への不安と自社環境の弱点を天秤にかけた場合、後者の問題の方がより深刻です。「移行を否定する理由はない」と私には思えました。
担当者が覚悟を持って進めることは当然ですが、社内外に強力なパートナーを持つことも鍵になると思います。
移行を検討し始めた4年前、内田洋行に相談しました。最初は懐疑的な答えしか返ってきません。今考えれば当然です。プライベート仮想クラウド環境の中でスーパーカクテルを本当に稼働させるという事例が当時はまだなかったのですから。安全に動く保証はなく、リスクも高かったと思います。会うたびに言いたいことをいって内田洋行を困らせていました。移行とその後の検証はたいへんでしたが、内田洋行が強力なパートナーになってくれました。
「無駄な投資をすることなく、みんなが使いこなせて業務効率がアップするシステムを構築する」言葉では簡単ですが、一筋縄ではいきません。これを旗印に、味方を増やし、経営者の方に理解してもらう努力も続けました。
トーラクにはシステム担当者は私しかいません。職務上はひとりで全部をやらなくてはなりませんでした。しかし、私もスーパーマンではありません。できることもたかが知れています。しかし社内でシステムを使用する人たちは、トラブルがあれば私に頼るしか方法がないのですね。
この現実の中でいかに効率よく問題を解決していくか。そう考えた時、社内外にたくさんのパートナーを見つけることが必要だと感じました。アプリ、ネットワーク、モバイル、サーバー、パソコンといろいろ分野はありますが、それぞれ個々に精通している人はたくさんいます。自分がすべてを解決できなくてもパートナーをうまくディレクトすることで、その場その場で最適の解が見つかればいいと思っています。パートナーのみなさんには、たいへん感謝しています。彼らの存在が、スーパーカクテルのクラウド環境への移行も可能にしてくれたと思っています。