物流に自動運転・自律移動の技術を
私たち「ZMP」はロボットメーカーです。2001年に会社を設立し、最初は「PINO」という二足歩行のロボットを作っていました。その技術を発展させ、さまざまなロボットを開発していきました。例えば「miuro」という音楽ロボットは、当時流行っていたiPodを挟むと音楽に合わせて踊ります。さらに人のあとをついていったり、自分で部屋の位置情報などを認識して自動で動いたり、といったロボットでした。
こうした製品開発で培った技術が幅広く産業分野に応用が効くのではないかと考え、2007〜8年ごろから自律移動、自動運転の方向に事業を展開することになりました。
最初は、ミニチュアタイプのロボットカーを作りました。これはステレオカメラやレーザーセンサを搭載し、路面の白線や周囲の環境を把握しながら自動走行ができる製品で、自動車メーカーや研究機関において、自動運転や運転支援技術の研究開発や実験にてお使いいただきました。
自律移動に必要となるセンシング技術や制御技術をいろいろなハードに適用することにより、さまざまなものを自動化できます。人が乗るクルマにも自律移動のシステムを導入することによって、自動で走らせることができるようになります。
これらの技術を物流分野に応用していこうと開発したのが、これから紹介させていただく「CarriRo(キャリロ)」です。キャリロは、開発に約3年をかけて今年の8月から量産品の出荷を開始しました。
自律移動するCarriRoを開発中
現在、「自律移動モード」を開発中です。自律移動の技術を応用して、CarriRoを自動で動かすモードです。下の絵に示したように、部屋の四隅にビーコンのポールを設置します。3つビーコンの光をキャッチできれば、そのエリア内の座標軸を設定できるので、その座標軸を各CarriRoが共有してルートを記憶させることができます。一度ルートを記憶させれば、あとは自律走行で行ったり来たりできます。なお、こちらはあくまで一つの自律移動の方式で、最終製品に搭載される技術は異なる可能性もあります。
倉庫、ショッピングモール、工場などで多様・多彩に活用
CarriRoのおもな活用方法をいくつか紹介したいと思います。
【倉庫、ショッピングモール】
最もよく見られるのは、倉庫や物流センター内でのピッキング業務、入庫・出庫業務に使うというものです。作業者が腰にビーコンをつければ、後ろのCarriRoがついてきます。女性や高齢者でも荷物の搬送をラクに行うことができます。
ショッピングモール、デパートの館内物流でもCarriRoは力を発揮します。現場では、作業者が台車を押して100mほどの距離を行ったり来たり、1日に何十往復もしています。これをカルガモモードで追従させれば、3回分の往復を1回で済ませられますから、作業負荷が下がり雇用の安定も期待できます。
【製造業、小売業】
工場内での工程間の搬送では、様々な使い方が考えられます。いわゆるミズスマシ(工程間の搬送作業者)といわれる、搬送だけを専門に行う方の作業効率を上げることで、人数を少なく抑えることができます。AGV(無人搬送車)にビーコンをつけ、それをキャリロが追従することによってAGVの搬送効率を上げることも可能です。
スーパー、ホームセンターなど大型の小売店舗でも、重量のある商品の品出し業務において搬送回数や作業負荷を下げることができるでしょう。
物流業界では自動化が進み、ロボット系のマテハン(マテリアルハンドリング)、AGV、自動倉庫などの導入を考えられている方も多いと思います。これらは省負荷効果、導入効果はありますが、導入にはかなりの初期コストが必要です。業務フローの設計や、レイアウトの変更なども必要になり、導入後のメンテナンス費用もかかります。なかなか踏み切れないので、手押し台車など人手の機器を使い続けているという会社も多いと思います。
私たちは、完全自動化と人手の中間を埋めるような製品開発を行っています。CarriRoは、1台のリース価格が月額3万5000円ぐらいですから、ハードルを感じることなくお使いいただけるのではないかと思います。この価格の中にメンテナンス料も含まれますから、ランニングコストの心配もありません。