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【内田洋行ITフェア2016in東京】 編集長が事例でひも解く! これが物流業界最新事情

2016/12/26 [物流,セミナーレポート]

労働力不足、環境問題、セキュリティ・セイフティ…。さまざまな課題を突き付けられている物流分野では、問題を乗り越えるべく新たなチャレンジが次々に始まっています。物流・サプライチェーンの専門情報誌『月刊マテリアルフロー』が取り上げる最新動向の中から、見える化・自動化の実現に向けた「IoT/RFID/ロボティクス」関連を紹介します。

目次

  • RFIDの導入が再び活発化する中、IoTやシェアリングなど新トレンドも
  • 全商品にRFIDを取り付けて精算。物流、仕分け、入荷検品、在庫管理、清算にフル活用
  • ロボットを取り入れて人手不足解消と生産性向上
  • IoTとシェアリングが物流の生産性をさらに上げる

内田洋行ITフェア2016 in 東京にて

株式会社流通研究社 専務取締役 月刊マテリアルフロー 編集長
菊田一郎 氏

※講師プロフィールは講演当時の所属、役職となります。

82年名古屋大学経済学部卒業。83年(株)流通研究社入社、90年より月刊「マテリアルフロー」(当時「無人化技術」)編集長、11年専務取締役。06年より東京都中央・城北職業能力開発センター赤羽校「物流の基礎」講師。マテリアルハンドリングから物流・ロジスティクス、サプライチェーン、RFID/IT関連分野まで、内外の企業現場・キーマンインタビュー取材・執筆を継続するかたわら、2012年より同社主催で毎年開催中の「アジア・シームレス物流フォーラム」の企画・実行統括を担当。著書に「ロジスティクスで会社が変わる」(白桃書房、共著)、「物流センターシステム事例集T〜Y」(流通研究社)、ビジネス・キャリア検定試験標準テキスト「ロジスティクス・オペレーション3級」(社会保健研究所、11年改訂版、共著)など。

RFIDの導入が再び活発化する中、IoTやシェアリングなど新トレンドも

私は、株式会社流通研究社が発行している『月刊マテリアルフロー』の編集長を務めています。本日は、物流業界の最新事情をご紹介したいと思います。焦点は大きく三つです。

 
  • 1. RFID導入チャレンジ事例
  • 2. 物流とロボティクス、ドローン
  • 3. 物流・SCMとIoT/リアルタイム見える化、シェアリング
  •  

一つ目は、ID情報を埋め込んだRFタグ「RFID(radio frequency identifier)」です。これは、弊誌では2000年代の中盤から盛んに取り上げ、現場への取材も続けています。一時期、RFIDは消沈したこともありましたが、今再び活発化して、さまざまな動きが現れています。二つ目は、最近のロボティクスやドローンの話題です。三つ目は、新トレンドのIoTの動向やシェアリングについてのご紹介です。

全商品にRFIDを取り付けて精算。物流、仕分け、入荷検品、在庫管理、清算にフル活用

RFIDの導入チャレンジ事例を三つ紹介します。

一つ目は、ドイツ発のアパレル製造小売業「マルコポーロ」です。これは、同業種のZARAやH&Mより1ランク上という感じのプレミアムカジュアルファッションを扱っていて、日本では未進出のため知名度は低いのですが、欧州では広く成功し、最近は中国に進出するなど勢力を拡大しています。弊誌では、ドイツ・ミュンヘン店を取材しました。すべての商品にRFIDのタグが付けられて管理されていました。工場や物流センターでの入出荷検品をはじめ、店舗での販売エリアやバックヤードの入出庫管理、棚卸し、レジ精算、万引き防止まで、RFIDをフル活用。マルコポーロ側に話を聞くと、RFIDの導入理由で一番に掲げていたのは接客時間の拡大でした。接客時間と売り上げの相関関係は証明されており、店員が費やす棚卸しやレジ対応、入出荷管理、在庫管理の時間をできるだけ最小化して接客時間を拡大することで、売り上げを伸ばしたいとのことでした。例えば、棚卸しの作業は、導入前は15人4時間かかっていたのが12人30分に減らせたそうです。店の携帯端末を陳列棚にかざせば、どの商品がいくつあるかが短時間で読み取れるからです。工場から物流センター、店舗、レジまで、サプライチェーンの全過程で一つのタグを使うことにより導き出しているリターンのあり方は、注目すべき事例だと思いました。

二つ目は日本の事例で、物流総合企業「アサヒ・リンク」の共配センターです。編集部は、アサヒ・リンクの岐阜LCに行き、イオングループの中核小売事業会社「イオンリテール」向けの共配現場を取材しました。ここでは入荷検品の自動化にチャレンジしていて、トラックから運び出した段ボールケースに入れたまま、RFタグ付きのアパレル商品の全数を読み取ろうとしていました。これは極めて難易度の高い読み取りですが、付加作業が一切生じないというメリットがあります。読み取りがうまくいかないときもあるのですが、今後さらに精度を上げていくとのことでした。同社はこのRFタグを使い、仕分け工程でも効率を高めようとしていました。RFIDの能力を最大限に引き出しながら使いこなす工夫をすることが、なかなか元が取れないと言われていたRFIDの活用の道を開くポイントのようです。

三つ目は、高難度の給食物流の事例です。取材した企業は「国分」です。給食の物流はとても難しく、病院や介護施設などへの給食となると、一人一人のメニューがあって多品種少量となり、しかも3温度帯で一括納品。これが、365日、多頻度、多店舗物流となります。ミスは許されず、欠品時は追加配送となりコストを押し上げます。この仕分けミスを撲滅するために、アソート(仕分け)工程でRFID付きのふたありコンテナを使うゲートアソートシステム(GAS)を導入。作業する人が仕分けるとき、食材ごとに、入れるべきコンテナのふたが開くようにしたのです。他のコンテナのふたは閉まっていますので、これなら間違えることはありません。生産性は、800〜1000個/人時をほぼ達成。導入コストは、ミス発生で生じていた追加発送のコストが不要になることでペイできると判断していました。RFIDには、いろいろな活用方法があることが分かります。

ロボットを取り入れて人手不足解消と生産性向上

ここからはロボットの事例をいくつか紹介します。

事例の四つ目は、ロボット自動倉庫です。家具・インテリア用品の製造販売をする「ニトリ」は、物流子会社(ホームロジスティクス)の通販発送センター(かわさきFaz)に、ロボット自動倉庫「AutoStore」を導入しています。この倉庫は、いわゆる「積み木型」と呼ばれるもので、ラックなどの構造物がほとんどありません。3次元格子のグリッドスペースにプラスチックコンテナを12段積み上げて、その上をロボットが走り回って必要なコンテナをつり上げて出荷ポートに自動搬送します。ロボットの動きはとても速く、入出庫能力の生産性が4.5倍になったそうです。ただ、梱包の手作業が追いつかず、同社はこの作業の自動化も検討。無人化を目指すとのことでした。

五つ目は、オフィス用品や日用品などの通信販売をする「アスクル」の事例です。同社は、物流センターでの商品のピースピッキングにロボットを導入しました。この企業の取扱商品は、オフィス用品をはじめ、カレーのレトルトパック、洗剤、飲料水など幅広く、その形や重さ、すべりやすさなどが実に多様です。このような現場でピッキングロボットを導入するのは、これまではハードルが高いと考えられていました。通常、ロボットは、あらかじめプログラムでティーチングをしないと、思い通りに行動させることができません。しかし、物流現場では千差万別の商品を扱うケースがあるので、プログラムが作りにくいわけです。そこで、同社は産業用ロボットコントローラの総合メーカー「MUJIN」と業務提携し、画期的なプログラムを開発して、ロボットが自ら商品を認識して最適なピッキング方法を判断できるロボット2台を開発し、試験導入したのです。2016年内には本格稼働させるとのことでした。

六つ目は、コンピュータ周辺機器などを製造する「エレコム」の導入事例です。同社も、物流センターのピッキング作業の人手不足から、ロボットシステムを2台設置。これは、安川電機製のアーム型ロボットとマイクロ・テクニカのカメラを組み合わせたものです。大きな特徴は、パターンマッチングという手法を使わずに、商品を自ら認識できることです。普通は、パターンマッチングをさせるために膨大なマスター登録をしなければいけないのですが、ロボットの特別なカメラを追加して視認性を上げることで、パターンマッチングをしなくてもピッキングできるようにしたそうです。3〜4人分の省人化ができると試算していました。

七つ目は「アマゾン」の事例です。この企業の物流センターでは、目当ての商品が入っている棚の下にロボットが潜り込んで引っ張って来ます。このやり方については、無駄があるという指摘もありますが、使い方によると思います。今、アマゾンの物流で話題になっているのは、やはりドローンでしょう。期待が高まっていますが、実現には微妙な問題がいくつかあります。まず、運べる荷物の重量が大型ドローンでも5 kg程度です。また、日本では、飛行範囲は操縦者が見える範囲に限るという法律があります。さらなる技術の進歩と法規制の変更が必要でしょう。

IoTとシェアリングが物流の生産性をさらに上げる

最後に、物流におけるIoTとシェアリングの話をしたいと思います。IoTという考え方は、もともとサプライチェーンの世界で生まれたものです。すべてのものにタグを付けて、その情報を可視化しようという発想でした。近年はこれに加えて、センサーの技術を取り入れ、さらに温度や湿度、震動、重量などの情報も連携させればさまざまなことが自動で判断できるようになると、発想が発展したのです。

物流の現場では、トラックが荷台に温度センサーを付けるようになるでしょう。どのトラックが今どこで何を何℃で運んでいるのかといった情報がリアルタイムで分かるようになるでしょう。また、倉庫ではフォークリフトにセンサーを取り付けることで、例えばピッキングしたい商品をどのような順番で取り出せば効率的に運べるか、機械が操縦者に教えるようになるかもしれません。すべてをインターネットにつなぐことで、サプライチェーンの生産性をさらに上げることができるはずです。

シェアリングも、今後の物流で大きなテーマの一つになるでしょう。例えば、コンビニエンスストアの「ローソン」は、生鮮食品を宅配するサービスを開始したのですが、運送事業会社の佐川急便と組んでいるのです。そして、ローソンの商品だけでなく、食品宅配事業者の「大地を守る会」や「らでぃっしゅぼーや」、スーパーマーケットチェーンの「成城石井」などが扱う商品と一緒に共配する仕組みを作っています。コンビニエンスストアというプラットホームをオープンにして、その配送リソースをさまざまな主体がシェアするという形を生み出したわけです。また、ネット印刷の「ラクスル」は、インターネットで軽貨物トラックをシェアリングできる仕組みを作り、新たなビジネスを始めました。これは、アメリカで話題を集める自動車配車サービス「Uber(ウーバー)」の物流版です。今後は、IoTやドローンの技術が普及し、倉庫やトラックのリソースがリアルタイムで分かるようになり、その余剰をシェアリングするようになっていくのは間違いないでしょう。

本日の話のまとめは以下の通りです。

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