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【内田洋行ITフェア2016in東京】 物流コスト削減は実態把握から始まる 〜「物流分析テンプレート」で物流KPIを定点観測〜

2016/12/26 [物流,セミナーレポート]

物流部門のコスト削減が求められていますが、一口に物流といっても、運賃や保管費、人件費をはじめ様々な費用が含まれています。その内訳は複雑でどこから手を付けたらよいのかわからない、という企業も少なくありません。社内の物流の実態を把握・分析する際のポイントと、手間をかけずに見える化を実現するツールを紹介します。

目次

  • KPI(重要業績評価指標)で見える化を!
  • 平均約5%の物流コストを下げたい
  • どこにどうメスを入れたらよいかわからない
  • 「物流分析テンプレート」で実態を分析・把握

内田洋行ITフェア2016 in 東京にて

株式会社内田洋行
情報システム事業部 ソリューション営業部
松浦 祥

KPI(重要業績評価指標)で見える化を!

物流の世界では「KPI」という言葉が最近よく聞かれます。KPIは、「Key Performance Indicator」の略で「重要業績評価指標」と訳されます。いわゆる業績の指標です。

7〜8年前から、KPIに関連した製品を提供していますが、当初、物流の世界ではほとんどKPIという言葉は聞かれませんでした。最近ようやく、注目が集まってきていることを肌で感じます。KPIとは以下のようなものです。

 
  • ・保管効率 ・積載率 ・人時生産性 ・誤出荷率 ・数量当たり物流コスト
  • ・商品別運賃 ・得意先別物流コスト ・クレーム発生率
  •  

物流部門は利益をうむ部門ではありませんが、最終的にはコストを下げることが企業の利益につながります。これは、荷主さんでも物流業者さんでも同じです。いかに「サービス」の質を高め、「生産性」を上げ、「コスト」を抑えるか。これが物流業務の生命線になります。この3つに関わる指標を分析することが、物流のKPI(=見える化)ということになります。

平均約5%の物流コストを下げたい

企業における物流コストは、過去長きにわたっておよそ5%でした。正確にいうと、売上金額に対する物流コストの全業種における平均です。これはアンケートによる数字なので、全企業の平均ということではないのですが、昨年は全業種で平均4.7%という数字が出ています。この数字は業種、業態によって変わります。通販、食品では比較的高い、逆に医薬品は極端に低いですね。トラックの運賃は変わらないので、一般的に単価が安いものは、対売上比の物流コストが高くなります。

約5%という物流コストをどのように下げるか? ここに注力されているお客様が多いように思います。その中で、下のような指標が出ていますが、私の感覚で言うと、輸送費がおそらく4割〜6割くらいを占めていると感じます。

コストを下げたいというとき、何をどう下げたいのかという話になってきます。物流コストの中で、輸送費が大きな部分を占めますが、ここをどうするか。かつては、単価を下げるように業者と交渉するというのがほとんどでした。最近はドライバーの人手不足などにより、トラックの確保が難しい状態が続いています。そこで、少ないトラックをどれだけ有効活用するかに知恵を絞るようになってきました。一企業が積載率の低い状態で物を運ぶのでは効率が悪いので、同じような業種、同じような納品先の貨物をいっしょに運ぶ。こういう動きが急速に広まってきています。

どこにどうメスを入れたらよいかわからない

私がお客様といかにコストを下げるかという話をするときに、「在庫が…」「運賃が…」というところまでは行くのですが、「どこの物流センターが…」「工場の中の何が…」といった具体的な話に進むことはほとんどありません。個々の現場の方が、自分の業務のことは把握していても、全社的に共有できていないという話もよく聞きます。

物流の業務において自社の最適なコストはどのくらいなのか? それを正しく把握しなければ、何を下げていいのかわかりません。先程の4.7%というような数字を掴んでいる会社は多いと思います。しかし、この中身をどこまで掴んでいるか?これが難しいところですが、キーになるところです。

企業の物流コスト削減策として、アンケート結果の上位にランクされる項目は、ここ10年ぐらいほとんど変わっていません。在庫削減、積載率の向上、物流拠点の見直し、保管の効率化が上位を占め、在庫削減、積載率の向上はずっと1位、2位です。物流コストを削減するためのアンケート調査にも関わらず、10年以上、在庫削減が1位というのはちょっとおかしいですね。作ったり、買ったりするから在庫は増え、売れないから在庫が減らない。物流だけでは在庫は削減できないので、生産部門、販売部門も共通の課題と認識すべきではないかと思います。

KPIのところでも言ったとおり、指標を出すという意味で、やはりコストに置き換えることが重要だと思います。物流専用の項目において会計に展開していくべきです。

例えば、「物流費」のうち「支払い物流費」は単純で、トラックを頼んだり倉庫を借りたりして業者に払う費用です。ところが、「自家物流費」になると、工場の中で倉庫を運営しているとか、営業の社員がピッキングをしているということも含まれ、こうした業務に対しては請求がありません。請求データからは、いくらかかっているかわからないわけです。4.7%といわれている数字に、自家物流費が含まれているのかどうか? これによって数字は大きく変わります。

物流コストを下げようとするとき、会社の今の実態が把握できていないので、どこに、どう手を付ければよいのかわからない。したがって、メスの入れようがない。課題の克服は、この認識から始まるのだと思います。

実際のところ、輸送費、人件費についても、「お客様別、地域別、業者別の運賃を、毎月データ化するのは相当に大変なので、やらなければいけないのはわかっているけれど、追いつかない」というお客様が多いのです。

コスト削減は物流の大命題なのですが、問題点を洗い出す前に実態を把握すること、すなわちKPIの指標を求めること(=見える化)が非常に重要になってくると思います。

「物流分析テンプレート」で実態を分析・把握

実態を把握するとき、現状を分析するときに役立つ「物流分析テンプレート」を紹介いたします。これがあれば、エクセルの膨大なデータに目を通して、抽出して、集計してといった作業が不要になります。

「物流分析テンプレート」は、「ドクターサム(Dr.Sum)」という分析ツールを元にしたものです。Dr.Sumは売上の分析や利益の分析によく使われますが、これを物流版にアレンジしたものが「物流分析テンプレート」です。

【運賃分析】

例を御覧いただきましょう。下に示したのは「運賃」の分析の画面です。左上の「地区別運賃」では、大阪からの都道府県別行き先運賃の高い/安いが色によって示され、県名をクリックすると細かい金額も表示されます。左下の円グラフでは、A運輸、B運輸、C運輸各社と、チャーターのそれぞれの比率を加味して、対売上運賃比率を分析・表示しています。

右下のグラフでは、売上金額、運賃、対売上運賃比率をワースト順に並べています。例えば、納品先が300件あったとします。毎日300件を調べるのは大変ですが、通常、ワースト10か20で全体の8割くらいを占めるはずです。こうした視覚化されたデータをまず見て当たりをつけ、実態を深く分析するために個々の詳細なデータを見にいけばよいのです。

【ロケーション別の出庫回数の分析】

倉庫ではロケーション管理ということを行います。下に示した画面には、どのゾーンから、何回出庫できたかというデータが表示されています。円の大きいところは出庫回数が多く、円の小さいところは出荷回数が少ない。今は多品種少量の時代です。フォークリフトで商品をパレットごと取ってきて出荷というわけにはいきません。アルバイトの方が1個ずつバラで取ってくることが、メーカー・小売にかかわらず多くなっています。

図を見るとわかるように、Dのゾーンから出口までは動線が長いです。出庫回数が多いDゾーンは出口の近くに移したほうが、効率がよいことになります。人を増やす・減らすだけでなく、なぜピッキングの時間がかかっているのかといった問題を分析する際にも、こういうツールは役立ちます。長い距離を歩いているからではないか? 商品の棚が探しにくいからではないか?といった原因を判別する資料となります。

最後に、ポイントをまとめさせていただきます。

実態把握が細かくできれば、コスト削減はいくらでも手が打てると思います。ただ、実態がわからないというところで思考を停止してしまうケースが多いようです。あるいは、実態を掴むための作業が大変なので、毎日やっていられないという方もいらっしゃるでしょう。適切なツールを用いて、実態を把握することを継続的にラクに行うこと、これがKPI(=見える化)を実現し、物流コスト削減を成功へ導くカギだと思います。

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