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【内田洋行ITフェア2017in東京】 日本の食品業界の新視点、過去の常識が通用しない時代〜バリューチェーンとニュースタンダード〜

2017/11/29 [食品,セミナーレポート]

デジタル技術が急速な進歩を遂げ、第4次産業革命が進行中と言われる時代になりました。過去の常識がまったく通用しなくなっています。その中で食品業界は、どのような変貌を遂げようとしているのでしょうか。食品に関わる産業活動を通して社会的な価値をどう付与していくか、バリューチェーンと新たなスタンダードの模索が続いています。

目次

  • 消費スタイルの変化
  • 日本の食資源の現状
  • 日本の食品流通の動向
  • まとめ 〜変化に対応し、社会的な価値を見出してニュースタンダードを作る〜

内田洋行ITフェア2017 in 東京にて

食品産業文化振興会会長
元三菱食品株式会社会長
中野 勘治 氏

消費スタイルの変化

日本を取り巻く消費社会の現状

いくつかのキーワードから変化する日本の社会と食品業界についてご説明いたします。

日本の食用農林水産物は、生産段階で約10.5兆円、バリューチェーンを経て、最終消費段階で約76.3兆円と言われています。これが我々の業界です。20年前は約70兆円という規模でした。しかし将来に向けてさまざまな問題が浮上しています。

第1のキーワードは「人口」です。

現在の約1億2千万の人口は、2053年には1億人を切り、2060年には約8600万人になることが予想されています。しかもその40%が65歳以上の高齢者です。少子高齢化は伸びない出生率ともあいまって、さらに進行していきます。文字通り人の「口」の数が減り、食品業界にとって大打撃です。

第2のキーワードは「地方」です。

人口は減っても、地方から都市部、特に首都圏への流れは変わりません。それにともない地方の商圏は大きく変化し、空洞化はすさまじい勢いで進行しています。近くに適当なお店がない、あるいは高齢で動けない、といった「買い物弱者」といわれる層は地方へ行くほど増えています。

第3のキーワードは「女性」です。

ここ20年、労働人口に占める女性の割合は飛躍的に増えています。働く女性なら「家事はなるべく簡単に短い時間ですませたい」と考えるのが当然です。この事態を受けて、惣菜など調理済みの食品を扱う中食市場が拡大しています。10兆円に届く勢いで、成長分野といえます。反対に家庭で調理する食品を扱う内食市場、レストラン等の外食市場はともに右肩下がりです。

ただ全体としては中食市場が10年で1兆5千億円の伸びを示しているのに対し、内食市場は5兆3千億円のマイナス、外食市場は5兆3千億円のマイナスとなっているので、全体のマイナスはカバーできていません。

新たなボリュームマーケットの誕生

時代背景と経済情勢を受けて、消費者の層は二極化しています。上下の二極化は、高額消費・富裕消費を先導するアッパー層と生活必需品を主体とした消費が中心のボリューム層の2つです。二極化にともない、従来のGMSやSMが得意としていた中間層は消滅しつつあります。

大衆消費という観点から今後最大の市場となるボリューム層ですが、左右の2極化も起きています。安さのみを価値として考え、生活必需品を主体に合理性・利便性を求めるコモディティ層と、豊かさを価値として考え、可処分所得の範囲内で生活を楽しむライフスタイル層です。食品業界においてもこういった新たな層を取り込むマーケティングが必要になっています。

インバウンド消費の拡大

国際化と円安にともない、ここ数年、爆買いに代表されるインバウンド消費の伸びが、市場として見逃せない規模になってきました。訪日外国人旅行者の数は、2011年以降増加傾向にあり、3000万人を超えました。消費額も3兆円を超え、そのうちの約1/4が食品関連と推定されています。ただ、爆買いは沈静化しており、これからはモノより体験が重視されるなど、その中身は変わっていく可能性があります。いずれにしろ、今後も円安基調が続けば、2020年のオリンピックに向けて成長していくマーケットです。

日本の食資源の現状

日本の食資源についてみてみましょう。

危機的状況にある日本の農業

日本の農業は将来に向けて危機的状況にあるといわれています。1980年代には約506万人いた農業就業人口は、2016年には7割減の約192万人となっています。その平均年齢は約66歳。後を継ぐ若い人が見つからず、後継者不足は深刻な問題です。また、1965年に約600万ヘクタールあった農地面積が2013年には約453万ヘクタールに減少し、耕作放棄地が増えています。特にここ10年で、滋賀県の面積に匹敵する約40万ヘクタールが耕作放棄地となりました。食料生産という観点からは大変厳しい状況が見えてきます。

海外市場への期待

危機的な状況にある農業ですが、海外市場を見たとき、明るい材料もあります。日本の農産物の輸出額は2011年時点で56位と高くはありませんが、世界の食市場におけるアジア市場は伸びており、中でも日本食の人気が高まっています。こうした流れを受けて、政府も農林水産物・食品の輸出額を2020年までに1兆円規模にという方針をうち出しています。2012年が約4500億円ですので、10年で倍増しようという計画です。その後、この計画はさらに1年前倒しされ、2019年達成を目指すとされました。残念ながら2016年時点で約7500億円ですから、相当厳しい状況です。

日本の食品流通の動向

全体的な傾向としては、消費者接点としての店舗の地位はかなり低下しており、反対に配送を前提とした食品ビジネスは伸びていきそうです。

小売業は業態間競争が激化

各業態が様々な領域に進出し、従来の棲み分けが変わってきました。目立つのは百貨店、GMS、食品スーパーの退潮です。さまざまな連携も試されましたが、成功を収めるところは少なく、閉鎖・廃店が続いています。好調だったCVSも頭打ちで、かわりにライバルであるドラッグストアが伸びてきました。高齢者がショップ店員と薬局などでコミュニケーションをはかれるため、人気が高まっています。

今後、市場として伸びてきそうな業態はネット通販・宅配といった無店舗型です。将来はスーパーやコンビニと並ぶ第3極になるかもしれません。

外食産業の動向

トピックスとしてコーヒーを巡る業態間の争いがあげられます。スターバックスやタリーズコーヒーといったフルサービス型の喫茶店チェーンが店内の空間を巧みに演出するなどして「コーヒーを飲む価値」を消費者に訴求していく中、コンビニの低価格コーヒーが勢いを増しています。年間300億杯を巡るシェアの争奪戦はますます激しくなりそうです。

メーカーの動向

人口減による国内市場の縮小を受けて、収益源を海外市場に求めるメーカーが増えてきました。例えば、味の素はEU市場に進出するべくフランスでの家庭冷食の販売を開始しました。

味の素は同時に世界でベストテンに入るメーカーを目指すと宣言しています。なぜベストテンを目指すかというと、ベストテンになれば、海外市場における輸出規制ルールなどを変える権限を持てるようになるからです。重要な視点です。

国内ではPB受託がますます盛んになりそうです。ただ、価格体系や流通体系がオープンになるので原価がガラス張りになり、結果的に収益に影響が出るリスクもあります。

流通の動向

無店舗型ビジネスの伸張を受け、宅配量は以前と比べて飛躍的に増えました。人手不足が深刻化し、流通各社は値上げやサービスの変更で対応しています。この対応にメーカー各社も一定の理解を示しています。

また、同業他社が手を組み、共同輸送や物流拠点の共同運営でお互いに流通コストを下げる試みも行われるようになりました。激しく業界のシェアを争っていたキリンとアサヒが共同配送に乗り出すなど一昔前には考えられませんでした。従来にない新しい動きとして注目できると思います。

まとめ 〜変化に対応し、社会的な価値を見出してニュースタンダードを作る〜

食品業界を巡る環境の変化と新しい動きについて俯瞰的に見てきました。厳しい状況は続きます。社会的な価値(バリュー)を中心に生産・販売・流通といった企業活動を行っていかなければ、持続的な収益はあげられません。そのためには今までの常識を捨て、新しいスタンダードを常に意識する必要があります。

下のグラフを見てください。古い統計ですが、明治維新が成立した1870年から1994年までの人口と経済成長のグラフです。これを見ると、必ずしも人口の増加とGDPの伸びが一致するわけではないことがよくわかります。2060年には約8,600万人と予測される日本の人口ですが、悲観する数字でもありません。これは現在のイタリアと人口もほぼ同じです。

少ない人口でも、GDPを伸ばすことは可能です。そのためには物価の上昇は必然で、政府もGDPを押し上げる経済施策を打ち出す必要があります。売れないからといってメーカーはいたずらに低価格に走らず、価格を維持する工夫をしなければなりません。人間の生活に密着した食品を扱う業界ならなおさらです。今、我々の努力が問われているのです。

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