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【働き方を変える業務改善セミナー】 デジタルビジネス時代の新技術と基幹システムとの関係

2018/8/9 [ワークスタイル,セミナーレポート]

ITを活用して収益の機会を生み出すデジタルビジネス時代の到来を受け、企業の基幹システムも大きな変換期を迎えています。
IoT、ビッグデータ、そしてAIやRPAといった技術は、企業のビジネスモデル、顧客体験、そしてコアビジネスに関わる社内業務に、どのような価値を付与するのでしょうか。
本講演では「伝説のエバンジェリスト」日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 エバンジェリスト 西脇 資哲氏をお招きし、国内外の動向や市場のトレンドを踏まえた、新しいデジタル技術と、基幹システムへの影響などについてお話しいただきました。

目次

  • 働き方改革は、思い切った施策が必要
  • デジタルトランスフォーメーションには何が必要か
  • AIはどのように利用されているか
  • AIはどこまで進化しているか
  • AIを業務システムと連携させる段階へ
  • AIにできて人にはできないこと
  • AIにできることはAIにさせる
  • MR(複合現実)とは何か
  • AI・MRが働き方改革を加速する

働き方を変える業務改善セミナーにて

日本マイクロソフト株式会社
業務執行役員 エバンジェリスト
西脇 資哲 氏

日本経済新聞で紹介されたIT「伝道師/エバンジェリスト」。2013年には日経BP社から"世界を元気にする100人" にも選出。現在は日本マイクロソフトにて多くの製品・サービスを伝え広めるエバンジェリスト。著書に『エバンジェリストの仕事術』、『プレゼンは“目線”で決まる』、『新エバンジェリスト養成講座』など。TOKYO FM「エバンジェリストスクール!」を乃木坂46とともに放送中。

働き方改革は、思い切った施策が必要

今、働き方改革が大変話題になっています。マイクロソフトでも、2016年の5月に就業規則を大きく変更しました。たとえば、フレックスタイム。今さらめずらしくもありませんが、多くの企業様のフレックスタイム制度では、10時から15時までといったコアタイムがあるのではないでしょうか。

マイクロソフトの場合、コアタイムもなくしてしまいました。何時に出社しようと自由ですし、出社しなくてもいい。大雨の日には、出社する社員が極端に少なくなります。皆、在宅勤務をするからです。

「そうは言っても、お客様とのミーティングがあったら出社しなければならないのでは?」と思う方もいるかもしれません。そのような場合、たとえ相手が初めてのお客様であっても、当社ではテレカンファレンス(遠隔会議)をします。それは無理だという会社様には、では御社の仕組みを変えてくださいとまで言ってしまう。

そのくらい思い切ったことをしないと、働き方改革は進みません。

デジタルトランスフォーメーションには何が必要か

最近、「デジタルトランスフォーメーション」という言葉を耳にすることが多くなりました。「デジタルトランスフォーメーション」とは、デジタル(ICT)技術を活用し、企業のビジネスモデルやビジネスプロセスをよりよいものへと変革していくことです。

デジタルトランスフォーメーションを実現するために、どのような技術が必要でしょうか。企業の経営層に質問をすると、圧倒的に多い回答がAI(人工知能)です。同率2位が、ウエアラブル機器と量子コンピュータ、4位がIoT、5位がヴァーチャルリアリティ(VR)です。

マイクロソフトが最も力を入れているのは、AIとVRです。ただし、VRを私たちは、Mixed Reality(MR)=複合現実と呼んでいます。

AIはどのように利用されているか

AIは、大変古い学問であり研究開発投資分野です。1956年に国際会議で初めて人工知能という言葉が使われました。62年前からあったものが、ここにきて急速に注目が高まっているのはなぜでしょうか。

それは、インターネットやビッグデータ、クラウド環境があり、スマートフォンやAIスピーカー、自動運転車など、すぐれたデバイスがあるからです。言い換えれば、AI技術も、それを活かせる環境やデバイスがなければ使う意味がありません。

たとえば、アメリカのあるエレベーターメーカーでは、世界各国にある自社のエレベーターをAI技術によって管理しています。エレベーターを動かすモーターにつけた監視カメラからのデータをコンピュータの故障予測システムに送り、あと何日で故障するというアラートを出す。そこからユーザーの基幹システムにアクセスし、修理部品や修理要員を手配するという仕組みです。

従来なら人間が保守点検に出向いてやっていたことをAIに置き換え、さらにERPとつなげることで、業務の効率化を実現しています。

また、ある工場では、監視カメラとAI技術を組み合わせることで、たとえばドラム缶が倒れてオイルが漏れている様子を監視カメラがとらえると、AIが危険だと判断し、もっとも近くにいる現場スタッフに向けてアラートを出す。こういうことがすでに実用化されています。

AIはどこまで進化しているか

AI技術の中でも人間が目で見て確認する作業、耳で聞いて確認する作業に代わる機能については、かなり精度が上がっています。

たとえば、従来のAIは、猫の全身写真を見て「猫」と判断することはできても、耳だけ、鼻だけの写真を見せて「猫」と判断させることはできませんでした。しかし、大量の猫の画像を見せてAIに学習させることで、部分だけを見せてもかなりの精度で「猫」と判断できるようになりました。

音声認識についても、たとえば Microsoft PowerPoint ® の(字幕)機能では、普通の速度で話した言葉をリアルタイムにテキスト化することができます。従来の音声認識ソフトや予測変換機能と違うのは、文意を理解できることです。たとえば、全く同じ発音の「定期」「提起」という言葉を、文脈から判断して正しく変換する。文脈から、これは疑問文だと判断したら、いちいち指示をしなくても文末に「?」をつけることすらできる。マイクロソフトが製品を供給しているすべての国の言語に対応しているので、音声をテキスト変換するだけでなく、翻訳もリアルタイムですることができます。

AIを業務システムと連携させる段階へ

AI技術を使って、マイクロソフトはある実験をしています。

そのうちの一つが、マクドナルドのドライブスルーで顧客の注文の音声を読み取って、オーダーに変換するということです。

たとえば、「ハッピーミールを2つ。1つはチーズバーガーとオレンジジュースのセット、もう1つはチキンナゲットとコーヒーのセットで。コーヒーにはシュガー1つとミルク2つをつけて。チーズバーガーは、1つはオニオンとマスタード抜きで」といった複雑なオーダーを認識し、最終的に、オーダーシートの形にする。最後に「やっぱりハッピーミールはいりません」と言われたら、それに関する情報だけを削除することもできる。

こうしてできたオーダーデータを、裏で稼働している業務システムや基幹システムにつなげようとしています。

従来の技術では、音声認識までしかできませんでした。しかし音声認識だけでは、業務プロセスとの連携ができない。オーダーデータにすることで基幹システムと連携し、業務の効率化が実現できるのです。

AIにできて人にはできないこと

もう一つ、事例を紹介しましょう。

昨年アメリカで、30万ページに及ぶJ.F.ケネディに関する文書が公開されました。膨大な文書の中には手書きのもの、写真、お店のレシートなど、あらゆる形式の情報が含まれています。

これをマイクロソフトのAIで分析しました。たとえば、ケネディ暗殺の犯人はオズワルトと言う人物だと言われていますが、オズワルトというキーワードを探すと、手書きの文書はもちろん、写真も見つけることができます。写真にオズワルドとは書かれていません。しかし、マイクロソフトのビッグデータが分析して、これがオズワルドの写真だと判断したのです。

AIができるのはこれだけではありません。ある事物とある事物の相関関係を見つけることができます。たとえば、オズワルドというキーワードとともに、シルビアという名前が頻繁に出てくることがわかりました。シルビアに関する文書を調べていくと、シルビアとオズワルドとの関係が見えてきます。

また、オズワルドがケネディ暗殺に使ったのは銃でしたが、ガンショップというキーワードで文書を調べていくとオハイオ州というキーワードとの相関関係が見えてきた。それによって、オズワルドがオハイオ州のガンショップで銃を購入したことがわかってきました。

30万ページの文書の中からこのような相関関係を見出すことは、人の目では決してできないでしょう。

AIにできることはAIにさせる

人の目で見て判断すること、耳で聞いて判断していたことは、もうAIに置き換えることができるし、そうしたほうがいい。人間だと見落としたり、忘れてしまったり、放置したりすることもありますが、AIにはそんなことはありません。

マイクロソフト社内でも、秘書やアシスタントの仕事はどんどんAIに置き換え、人間はより高度な仕事に専念できるようにしています。

お客様対応は、チャットボットによる自動応答ですし、電話対応の場合でも、AIがお客様の声のトーン、使用する言葉、語尾などからお客様の感情を分析し、オペレーターは、AIの分析とアドバイスに基づいて適切な対応をするようにしています。

社内の諸業務も、AIが人に代わって行っています。たとえば会議室予約も、チャットボットに「今から30分利用できる会議室を探して」と指示をすると、AIが会議室予約システムにアクセスして空室を探して予約をし、私のスケジュールに予定を入れるところまでやってくれます。そのほか名刺の発注や出張の手配など、あらゆる秘書業務をAIがやってくれます。

調べてみると、チャットボットに対して1週間あたり2000件以上のオーダーがあることがわかりました。これを今まで人間がやっていたのです。それだけの人件費を、AIによって削減できるとは大変なことです。

ただし、AIは最初から賢いわけではありません。当社の場合、毎月末に、AIが間違えたオーダーについて次は間違えないように学習させています。

たとえば、会議室予約の場合、「会議室欲しい」「会議室を押さえて」「会議室取って」は理解できたが「部屋がいるんだけど」は理解できなかったという場合、これも会議室予約のことだと学習をさせる。

AIの学習には大変な時間がかかり、そのための人員も必要です。それは覚悟しておかなければなりません。しかし、これは相手が人間であった場合も同じです。新しい人が入ってきたらそのたびに教育をしなければなりません。でもAIなら、一度教えたら、辞めることはないし、教えたノウハウはずっと蓄積されます。その点、AIのほうが結局はメリットがあります。

MR(複合現実)とは何か

AIの次にマイクロソフトが力を入れているのがMR=複合現実です。

VRといえば、ゲームや映画などのエンターテインメント系のコンテンツを思い浮かべるかもしれませんが、われわれが追求したいようとしているのは、エンタメの世界ではありません。

VRは全部がニセモノの仮想現実です。これに対し現実の世界を物理的現実空間と呼ぶとしたら、われわれが追求しているのは、仮想現実と物理的現実の中間にある=複合現実です。

これまでのVRの技術は、仮想現実をいかにリアルに見せるかに重きが置かれてきました。MRはその逆で、高度なセンシング技術によって物理的現実をリアルタイムで再現し、その上に仮想現実を映し出し、物理的現実と仮想現実を融合させます。

MR用のヘッドセットを装着すると、現実の風景の上にコンピュータ映像が重なって表示されます。ヘッドセットにはセンサーが搭載されていて、手を動かすことによってさまざまな操作をすることもできます。

MRの技術によって何ができるかというと、遠隔会議や遠隔医療はもちろん、たとえば、遠隔地の工場にいる現地スタッフが、ヘッドセットを装着し、MR上に表示される専門家からの指示に従って、修理やメンテナンスを行うことができたり、倉庫のピッキング作業などを効率的に行ったりなど、さまざまな分野で利用することができます。

最大の利点は、MRを使えば、古い工場や倉庫を、建て直すことなくインテリジェント化できることです。たとえば、ここから先は立ち入り禁止という場合も、実際に柵を作らなくても、MR上に柵を設置すればいいのです。

AI・MRが働き方改革を加速する

最後に、今日の話をまとめたいと思います。

今日は、マイクロソフトが現在注力しているAIとMRについてお話ししました。

AI技術の進展によって、人間の目や耳で行っている作業は、AIに置き換えることができるようになってきました。しかし、せっかくのAIも、業務システムとつながらなければ意味がありません。また、VR/MRも、仮想現実がきれいに見えるだけでなく、それを今のシステムにいかにシームレスに重ねるかが重要です。

AIやMRの技術を既存の基幹システムと結びつけることによって、現場の生産性を向上し、業務最適化につなげることができる。デジタルトランスフォーメーションを実現するために、ぜひAIやMRといった最新の技術を取り入れていただければと思います。

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