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【ウチダ食品・物流フォーラム2016】 次世代を見据えたロジスティクス戦略実践事例

2016/11/4 [食品,物流,セミナーレポート]

創業120年を迎える株式会社泉平。“Food connects people「食」は人をつなぐ”をスローガンのもと、2014 年に神戸市に「近畿物流センター」を新規開設しました。次世代を見据えた事業改革の中核としての本取組みの狙いと実態、これからの目指すべき業務用食品卸としてのロジスティクスビジョンや施策についてご紹介します。

目次

  • 最新の近畿物流センター
  • 改善までの道のり
  • 計画の軌道修正
  • 近畿物流センターの立ち上げとロジスティックの確立
  • 今後の課題〜次世代をにらんで〜

ウチダ食品・物流フォーラム2016 にて

株式会社泉平
取締役執行役員 大和 善博 氏

泉平は学校給食、メディカル給食と産業給食の3分野で幅広く事業展開する総合食品商社です。創業は1896(明治29)年。もとは陸軍御用達の食品問屋で、中国(満州)にも拠点があります。戦後、陸軍向けの公共食材の使い道を模索し学校給食を立ち上げたのが食品ビジネスの起点です。業務用食品で冷凍・ドライ・チルドの3温度帯の加工品、調理品、乾物を扱っています。従業員数は現在250名、売上高は119期3月決算126億円を見込んでいます。現在、本社が姫路、拠点は、大阪、姫路、岡山、福岡、北近畿。そして今回ご紹介します神戸支店と併合している「近畿物流センター」です。
同社のスローガンは「Food connects people(食は人をつなぐ)」で、皆を笑顔にするのが狙いです。

最新の近畿物流センター

泉平は「物流を科学する」をコンセプトに物流改革を積み上げています。今、それを実践しているのが「近畿物流センター」です。2014年3月に稼働した同センターは、商品売上(通過)高約59億円。住所は神戸のテクノ・ロジスティクパークという工業団地内にあります。敷地面積約5500u(1600坪)、うち倉庫床面積は2545u(620坪)の2階建てです。駐車台数は108台で24時間稼働し、常時、駐車場は満車状態です。

保管能力は、冷凍5800間口、チルド720間口、ドライ3625間口あります。主な設備では太陽光パネルと自家発蓄電の仕組みと、監視カメラ、陽圧管理です。

取扱は現在5000(登録2万)SKUで、入出荷量は3000〜5500ケースです。

システムは内田洋行のスーパーカクテルで基幹システムと一部改良型のWMSを導入しTWSやデジタルレコーダーやドライブレコーダーを採用しています。

従業員は100名強(荷役要員45名)、配送コースは約39、得意先は1200あり、毎日配達する先は500軒程度です。商圏は神戸を中心に120分圏内の配送箇所。神戸、大阪、京都と滋賀・奈良・和歌山の一部が現在対応しているエリアです。

1階は、入出荷バースが12台。前室が5℃管理で、100坪強です。冷凍庫は約300坪弱。あとは冷凍分荷室30坪、チルド庫が20坪と現場事務所があります。2階はドライ庫とオフィスでドライ庫は3分の2、残りが更衣室や会議室です。垂直搬送機とエレベータがあり、リスク管理のため上下搬送機は2台を設置しています。

入出荷バースは壁の色が寒色から暖色に入荷温度帯に応じて変化させ、トラックが着けやすい工夫をしています。通常は2t車用で、2箇所は10t車、ウィング車用に高速シャッターも配置しています。前室は5℃管理で、無人時に自動で10℃になる設計です。

冷凍庫およびドライ庫は、有人で上下運動するピッキングカートを導入しています。冷凍分荷室はメディカル専用です。ドライ分荷室は主に学校給食が中心で、栄養士の視察も多く、衛生面で注意を払い、空調の陽圧システムを導入し異物混入しにくい仕組みです。

テストキッチンは、主に営業が顧客向けプレゼンやサンプル試作に活用しており、業務用冷蔵庫を配置して、メーカーサンプルを在庫します。売卸業でサンプルを庫内に置くのは資産管理上よくないので、センター稼働後は商品とサンプルを別管理としています。

オフィス部門は太陽光と蓄電システムが特徴でOA機器は最低8時間稼働できます。阪神大震災で最長3時間停電した教訓を踏まえ、2倍以上稼働できるようにしています。

ロケーションサインでは、アップル、エッグ、アイスなど初心者でも直感的に理解できるイラストを使うことで荷受作業員のピッキングが円滑になりました。Voiceシステムを導入し、アルファベットでは認識しづらい「アップルの〜A」の形で発話することで、認識率を高める工夫をしています。

物流システムは、WMSとTMSを導入しています。WMSのVoice機能は入荷検品や日付管理で活用しています。今期2次出荷にも応用する予定です。エラーがなく生産性が高いところから順次システム化を進めています。TMSは画面上で最適な配達を制御する仕組みであり、活用が進んでいます。当初、配送ルートは固定でしたが、物流コストの見える化で数値が掌握できると、高額な配送コストがつまびらかになりました。TMSで細かくシミュレートを行った結果、道路情報や高速料金の変更も瞬時に把握でき、配送コストの制御が可能になりました。

改善までの道のり

当時の泉平は120年の歴史があるのに「物流」を考えたことがない、営業主体の会社でした。営業が取ってきたものを仕入れて、保管し、ピッキングして出荷する。仕入れから出荷は全く光が当たらず、営業以外の数値も同様でした。ある意味“注文を取ったら終わり”でした。本当に物流の問題を解決しようとしたら、毎日課題だらけで、課題を課題と感じないよい社風がありました。営業も売り散らかしで、「物流コスト」の概念は皆無でした。当時、物流コストはいくらだか全く誰も分かりませんでした。当時の倉庫写真を見ると、作業スペースもなく、ロケーションも適当で、通路はふさがり台車も入らないという状況でした。

それを是正するため、センター新設を機にプロジェクトを発足し、

(1)リスクマネジメント

(2)市場対応力の強化

(3)企業体質の抜本な改革
に取り組みました。コンセプトは「安心・安全を約束する」「モラルの向上・作業インフラ整備」「ローコストオペレーションの実現」の3点で、当たり前のことを愚直にやる仕組み作りが必要であり、プロジェクト開始年を「物流改革元年」としました。

拠点統廃合のための業務改善プロジェクト

西日本、福岡を除いてその他拠点は建屋の老朽化が進んでいました。外部営業倉庫委託度が高かったため、全拠点を統合したらどうなるか検討しました。在庫数、入出荷能力、サービスレベル、納品時間、軒先条件、現行業務フロー、システムやコストなど各拠点の定性・定量調査し、モデル策定する予定でした。

計画の軌道修正

この結果、大阪から岡山までの6拠点を統合する当初の計画は、必要スペースや人員、投資額を試算した結果、非常にリスクが高く、投資効果が出ないと判明し、メディカル部門と大阪と神戸の3拠点を統合することに軌道修正しました。統合拠点はどこが最適かも検証しました。ユーザーの位置情報をTMSでプロットし、仮配送コースを運用し、ユーザーごとの空走距離と荷卸し時間等の条件を入れて試算した結果、テクノパーク、ポートピア、六甲アイランド、西宮北、の4カ所が候補となりました。最小台数の車で、最短の稼働時間、走行距離、燃料、実稼働時間、空走時間、有料道路料金の金額でテクノパークに決定しました。

近畿物流センターの立ち上げとロジスティックの確立

2年前に稼働したセンターですが、その後も荷姿単位、マスター整理など徹底できておらず、SKUの絞り込みが急務なのを理解しながらも徹底できていませんでした。Voiceなど新業務システムのリハーサル不足が露呈しシステムがきっちり回りません。最初の6カ月、現場では不良在庫や返品の山、誤出荷の嵐、劣悪な残業など「仁義なき戦い」が続きました。SKUを始め、ロケーション整備、システム不良、改良も必要で、当初の想定で動かないことも。顧客の締め時間の遵守依頼、軒先条件の限定、管理基準と改善文化の確立を目指しました。切り口は「すべての項目の見える化」です。物流を科学する「KPI」の新設と追究を検討しました。

最初に荷役のKPIを導入し、1人1時間当たりの作業記録の向上から始めました。全体の状況が見えるようになりエラーもわかり、改善が進み6カ月ぐらいで落ち着きました。その後は配送のKPI、受発注のKPIなど横展開し、作業ミスや欠品、生産性などを「見える化」しました。

近畿物流センターの売上は統合前が51億で、1年目56億、2年目59億と業績は順調です。「見せるセンター」の機能を持ち新規見学者の成約率はアップし、売上効果も高いです。利益は統合前が1億1000万円で、1年目はコスト増で7200万円と落ち込みましたが、2年目の当3月期は統合前利益を超過できる見込みです。

今後の課題〜次世代をにらんで〜

今後の課題は(1)人材育成(2)KPIの掘り下げ(3)エラーゼロの3点です。離職率の低下を目標とし人材育成に力を入れていく方針です。KPIで業務改善が実現できたので、効率面および品質面から更にKPIを掘り下げて行く意向です。そして、エラーゼロのセンターを目指します。

この3つのテーマで次のステージへ挑戦をしていきます。

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