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【中小食品メーカーのマーケティング戦略】 第2回:小規模を「チカラ」に変えよう

2021/2/4 [食品,コラム]

「中小食品メーカーのマーケティング戦略」がテーマの連載コラム(全4回)。地域や中小企業のマーケティングを主な研究テーマとして各方面で活躍する、静岡県立大学教授の岩崎邦彦氏によるわかりやすい解説コラムです。

目次

  • 小規模を強みに変えるマーケティング
  • “追い風”に帆を上げよう
  • 大は小を兼ねない
  • 時代は、「ラージ」から「スモール」へ
  • 小が大を超えるために
  • 「A・B・C」の3つの柱

小規模を強みに変えるマーケティング

日本の企業数の99.7%が中小企業だ。日本経済、地域経済が元気になるためには、小さな企業が元気になる必要がある。

食品業界においても同様だ。中小食品メーカーは、小規模であることを嘆くのではなく、「小規模の強み」を生かすという発想が欠かせない。今回は、規模の小さな企業のマーケティングの方向性を検討していくことにしよう。

“追い風”に帆を上げよう

昨今の大規模メーカーの不振などからも示唆されるように、規模の大きさは「強さ」を意味しない時代がきている。逆に、経済の成熟化、需要の多様化、人口減少、「密」を嫌う消費者の増加といった時代の流れは、小さな企業にとって「追い風」となり得る。

21世紀は、「小さいことは、いいことだ」の時代でもある。

とはいえ、景況調査などをみると、多くの小規模企業が不振だ。小規模企業の数も減少の一途である。追い風が吹いているにも関わらず、元気がないのはなぜだろうか。

その要因のひとつが、小さな企業の多くが、時代の追い風を生かし切れていないという現実だ。

ここで、海に浮かぶ「小さなヨット」をイメージしてほしい。

いくら追い風が吹いても、帆を上げなければ前に進むことはできない。

小さな企業も同様だ。単に、小規模であればよいということではない。時代の追い風を受けとめるためには、適切に帆を上げて、風を受けとめることが不可欠である。

では、小さな企業が時代の追い風を受けとめ、小規模を「チカラ」に変えるためには何をすべきなのか。

大は小を兼ねない

小さな店の強みは、[ ]である。

全国1,000人の消費者に、空欄に自由に言葉を入れてもらった。結果は、表1に示したとおりである。圧倒的に多くの人が共通して入れた言葉は、「個性」だ。さらに、「独自性」「専門性」「こだわり」といった類似の意味あいをもつ単語を上げる消費者も多い。

表1:小さな店の強みは、[ ]である。

一方、消費者は大きな店の「強み」をどのように認識しているのだろうか。表2をみると、消費者が認識する「大きな店」の強みは、「品揃えの豊富さ」「総合性」「価格の安さ」といった次元に集約されることがわかる。

ここで注目すべきは、小さな企業の強みとして挙げられた単語と、大きな企業の強みとして出てきた単語が、全く異なるということだ。小さな企業には小さな企業の強みがあり、大きな企業には大きな企業の強みがある。小さな企業は、大きな企業の「小型版」ではない。小さな企業には、小さな企業のマーケティングがあるということだ。

表2:大きな店の強みは、[ ]である。

時代は、「ラージ」から「スモール」へ

時代のトレンドは、「全国」から「地域」へ、「総合」から「専門」へ、「画一性」から「個性」へ、「量」から「質」へ、「無難」から「本物」へ、「効率性」から「感性」へ向かっている(図1)。

「地域密着」「専門性の勝負」「質の追求」「個性化」「本物追求」「感性追求」においては、大きな企業よりも、小さな企業が優位になり得る。

ただ、ここで誤解をしないでほしいのは、単に小さければ良いということではない。小さな企業に追い風が吹いていても、それを受け止めなければ意味がない。

図1:消費者ニーズのトレンド

小が大を超えるために

全国1,000人の消費者データを統計的に分析したところ、小さな企業が、時代の追い風を受け止めるためには、3つの力が必要になることが分かった(図2)。

図2:小規模を「強み」に変えるA・B・C

第一は「ほんもの力」だ。小さな企業が顧客を引きつけるためには、個性、こだわり、専門性から生み出される“ほんもの力”を磨くことが欠かせない。小が大を超えるためには、「尖がり」が必要だということだ。「尖」という字を良く見てみよう。

「大」の字の上に「小」がある。

第二は「きずな力」である。21世紀のマーケティングで大切なのは、「量」ではなく、「質」だ。顧客との絆、地元との絆を太くすることによって、地域に貢献し、優良顧客に繰り返し買ってもらう。

第三は「コミュニケーション力」だ。人を通じて、消費者とコミュニケーションをする力である。ICT化、AI化などハイテク化が進めば進むほど、反作用の力が生まれ、人的コミュニケーションなどハイタッチの価値も高まる。人の心を動かすことができるのは、AIではなく、人間だ。人を通じたコミュニケーションでは、小は大よりも優位にある。

「A・B・C」の3つの柱

「ほんもの(Authenticity)」「きずな(Bond)」「コミュニケーション(Communication)」という3つの力の英語の頭文字は、A、B、Cである。潜在的な「小規模力」を現実の「チカラ」に変えるためには、「A・B・C」の三つの力が柱になる。

A・B・Cの三要素の力を、それぞれ高めるとともに、各要素の相乗効果を生み出していくことができれば、小さな企業は、時代の「追い風」を確実に受け止めることができるはずだ。

規模が小さいことを逆手にとって、それをメリットに変えることができた企業は、簡単には競争の波に飲まれることはない。21世紀は、スモール・スケールが武器になる時代なのである。

静岡県立大学 経営情報学部 教授
岩崎 邦彦 氏

静岡県立大学 経営情報学部 教授・学長補佐・地域経営研究センター長 博士(農業経済学)。専攻は、マーケティング。とくに、地域や中小企業に関するマーケティングを主な研究テーマとしている。これらの業績により、日本観光研究学会賞、日本地域学会賞、世界緑茶協会 学術研究大賞、財団法人商工総合研究所 中小企業研究奨励賞などを受賞。
著書に、「地域引力を高める 観光ブランドの教科書(日本観光研究学会観光著作賞)」「農業のマーケティング教科書:食と農のおいしいつなぎかた」「小さな会社を強くするブランドづくりの教科書」「引き算する勇気:会社を強くする逆転発想」(いずれも日本経済新聞出版社)などがある。
公職は、静岡県地域づくりアドバイザー、中小企業診断士国家試験委員、世界緑茶協会世界緑茶コンテスト審査委員、近江米振興協会オーガニック近江米ブランディングアドバイザーなど多数。

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