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【物流コラム】 ロジスティクスで共同化+シェアリング

2018/6/13 [物流,コラム]

長年、物流・ロジスティクスに関する取材記事を書いてきた「月刊マテリアルフロー」編集部による「ロジスティクスで共同化+シェアリング」と題したコラム。

目次

  • なぜ今、シェアリングなのか
  • ライバルも共同化/日用雑貨+加工食品
  • 日用雑貨業界の共同物流
  • 加工食品業界の共同物流
  • 先端技術で物流シェアリング
  • トラックバース予約システム

なぜ今、シェアリングなのか

シェアリング・エコノミーが国内でも注目されるようになって、もう3年目くらいになるでしょうか。今では誰もが知っているのは、民泊のAirbnb(エアビーアンドビー)やタクシーサービスのuber(ウーバー)。自転車のシェアバイクやこれから期待されるカーシェアリングもありますね。

中古アパレルやブランドバッグのレンタルサービスもその一種。となれば以前からある「何でもレンタル」サービスも、同じ製品の効能を複数のユーザーで何度も使いあうのだから、シェアリングです。

レンタルがシェアリングなら、とっくの昔から、日本では江戸時代から堂々、貸本屋があり、貸衣装屋が(たぶん)ありました。

物流でレンタルと言えば、これも数十年前から、パレットその他の物流機材で、まさに当たり前のサービスとして普及し、継続的に実施されています。「所有から利用へ」「使いあう・分かち合う」ことにより、利用率を最大化する、そのモノの持てる効用を最大化する、というトレンドは、確かに新しいものではありません。

それがここにきて、物流・ロジスティクスの分野でも改めて、にわかに注目されている理由は、やはり現在の「物流危機」によるところが大きい。車が足りない。倉庫も足りない。人がいない……。

そこでまず喫緊課題に浮上したのが、前回に見たロボットやマテハン、ICT/IoT/AIなど先端技術を活用した自動化・省力化でありました。これらは直接的な手段なので、効果も見えやすいけれど、実は対症療法といっていい。「仕組み自体の変革」という、より大きな、社会的視点でのソリューションの1つとして、シェアリング、共有化、そして共同化の価値が大きく見直されてきたのでした。

シェアリングはICT/IoT技術との親和性も高い。よく考えてみると、車も倉庫も人も、季節や時間帯によっては空いているタイミングがある。かなりある。ただその現実を、離れた場所ではリアルタイムに検知できず、分かち合えない。そもそも余っているところと足りないところをマッチングさせる場もない。システムもない。

だからシェアできずにいたものが、ネットワーク、IoTそのほかの最新情報技術によって、「リアルタイム見える化」がより容易にできるようになって来た。こうして「物流危機」克服への朗報として、シェアリングにスポットが当たるようになってきたわけです。

ライバルも共同化/日用雑貨+加工食品

ここでシェアリングの精神の原点、人や企業単独ではなく、「みんなで最適化の可能性を探る」という発想からして、先駆的な取り組みである「物流共同化」のチャレンジを見ておきましょう。物流共同化はわが国でも、古くからのテーマであり続けてきました。

バブル経済前後の前回の物流危機を背景に、90年前後に中小企業庁が「中小企業物流効率化法」で支援施策を開始しています。複数の中小企業が連携して共同物流センター設置などの取り組みを支援する施策であり、その流れは現在の改正物流効率化法に引き継がれ脈々と生きています。

当時もいくつかの事例が生まれ、本誌も取材して回りましたが、昔はとにかく申請業務が面倒で使いにくいのと、販売ではライバルになる業界企業が物流だけ共同化する取り組みの本質的な難しさ、利害関係の相反から、なかなか続かないという実態もありました。

日用雑貨業界の共同物流

そんな中、長期的な成功事例として評価できる取り組みの1つが、日用雑貨業界のチャレンジです。1985年に業界VAN会社(株)プラネットを設立し、情報システム面から共同化の基盤作りをしたうえで、89年に共同物流事業会社(株)プラネット物流を設立。その物流効率化への期待効果は図表1の通り明らかで、その後も伝票やパレットの標準化など、具体的な取り組みを続けていました。

図表1  プラネット物流の事業運営ポリシー(月刊マテリアルフロー、2017年8月号より)

ただしプラネット物流は昨年、約30年にわたる役割を終えて解散しています。同社が「全国一律の共同物流スキームで経済合理性を追求してきたのに対し、事業者、環境、流通チャネル構造が大きく変化してきた現在、全国一律で同様の手法を継続するやり方ではこれ以上の高い成果は望めなく」なったこと、よりよいスキームを模索する必要がある、との結論に達したことがその理由だと、リーダーの一人は言っていました。

卸・小売業の全国的な再編、ECの拡大など、物流ネットワークの大きな変化に、新たな対応が求められたということです。しかし現在も同業界では、一部の共同物流センター運営を継続しながら、「次」へのステップアップを図ろうとしています。

加工食品業界の共同物流

もう1つ、「ライバルも協働」の事例として挙げたいのが、加工食品業界の取り組み。カゴメ(株)、日清オイリオグループ(株)、日清フーズ(株)、ハウス食品グループ本社(株)、(株)Mizkan、味の素(株)の食品メーカー6社が参加する食品企業物流プラットフォーム「F-LINE」のプロジェクトです。正式には2015年2月に狼煙を上げました。やはり納品伝票の統一化も含め、共通する得意先への共同物流プロジェクトを相次いで実施。モーダルシフトや一貫パレチゼーションなど、環境負荷低減の取り組みとも組み合わせ、実績を重ねています(図表2)。

図表2 F-LINEによる幹線の混載船舶輸送化と一貫パレチゼーション(月刊マテリアルフロー、2017年8月号より)

さらにF-LINEライン参加6社のうち、味の素、カゴメ、日清フーズ、ハウス食品グループ本 社の4社が物流事業の合弁会社をとして、2017年3月にF-LINE(株)、同4月に九州F-LINE(株)を設立。その後も共同物流会社の一本化方針を固めるなど前進中です。

並行して2016年5月、F-LINE参加6社に加えてキユーピーとキッコーマンの2社にも声を掛け、8社で「食品物流未来推進会議」=SBM会議を発足。さらにその輪を広げ、製配販連携に関する意見交換、情報交換、解決案の議論・検討を行っているもので、業界内でのダブル、トリプルスタンダードができることを避けるため、その今後に期待がかかります。

これらの企業連携の取り組みは明らかに、「物流危機」克服の手段は先端技術の活用だけでなく、「みんなで作るプラットフォーム」というソリューションが存在することを示唆していると私は思います。正直、場合によっては自社で投資して頑張れば済む先端技術活用よりも、難易度が高いかも知れません。日頃し烈に戦うライバル同士が同じテーブルにつき、様々な利害相反を乗り越え、共通の仕組み構築で合意しなければならない。

けれどもそのチャレンジは我々が目指すべきゴール、「社会的なサプライチェーン最適化」に確実に一歩近づく、本質に迫るもの。それだけに派手ではないが安定的な効果が見込めるはずです。

先端技術で物流シェアリング

次に取り上げたいのが、「倉庫スペースのシェアリング」。倉庫を必要なとき、必要な人に貸す、倉庫の空きスペースと企業の倉庫ニーズとのマッチングサイトを運営する物流スタートアップ企業、(株)soucoの取り組み。物流会社などが保有する倉庫の空きスペースを発見し、ネットを使って借りたい人に提供するサービスです。

本誌が「アジア・シームレス物流フォーラム2017」で同社をいち早くパネラーに招いて紹介し、流通研究社が発起人となって設立した「一般社団法人日本マテリアルフロー研究センター」でも「シェアリング・ロジスティクス研究会」の有力メンバーになってもらいましたが、その場で出会った大手不動産企業などとの連携をすでに開始しています。

最近は物の流れの変動が激しく、物を置くスペースが流動化していますが、このサービスを活用すれば物流量に合わせて倉庫スペースを借りることで機会損失も防げる。特に彼らが焦点を当てているのは、「小口で短期」の貸し出し。一般には倉庫を借りる規模は1,500坪以上、契約期間は1年以上から、というイメージだったのを、なんとひと坪単位で、契約期間は2週間から、という小口短期利用を可能にしているのが大きな特徴です(図表3)。

空きスペースという物流リソースを、ネットワークとシステムにより時間単位で細分化し、さらに情報連携をシステムで「リアルタイム化」したことで、シェアリング・マッチングを可能にし、スペースの効能を最大化するわけですね。

図表3 通常の倉庫賃貸契約形態との違い(月刊マテリアルフロー、2017年8月号より)

トラックバース予約システム

最後にもう一つ、情報技術の発展によって実現可能になった、物流シェアリング・共同化の取り組みを紹介しましょう。やはり日用雑貨業界の取り組みで、サンスター(株)などのメーカーが参加する(一社)日本マテリアルフロー研究センター(JMFI)・ドライバーの労働環境改善研究会による、「ドライバーの待機時間を解消する荷下ろし対策」がそれです。

リーダーの指摘によると、集荷先・納品先で発生し大きな問題になっているトラックの待機時間は、数時間レベルで慢性化している物流拠点が数多く、繁忙期には5時間、最悪で10時間超の待機が発生する場合もあるそうです。この待機時間はドライバーにとって先が見えない不透明で無意味な拘束時間であり、肉体的・精神的な疲労だけでなく、拘束時間規制を大きく上回る要因にもなっていることが知られています。

また路上に大型トラックが行列を作る状態は、地域住人にとっては交通上の危険が増し、騒音やCO2排出などの社会的な環境問題にも発展しています。

同グループが解決のための第一段階として着目したのが、荷下ろし時間を「予約受付」するシステム。つまり“荷下ろしをするために現地に並んで順番を待つ”という行為自体を解消し、前もって予約した時間に荷下ろしができる環境を作ろうというものです。同グループでは協力企業を募って予約受付アプリを構築し(図表4)、本年2月、国土交通省の支援を受けて実証実験も実施しました。

図表4 バース予約受付アプリの運用イメージ(月刊マテリアルフロー、2017年4月号より)

実はトラックバースの予約アプリは一昨年から、国交省の支援もあって現在までに受荷主となる多くの卸企業やIT企業が開発し、取り組みを開始しています。

しかしこのグループは、「単独の取り組みでは意味がない」と主張します。荷主となるメーカー各社と、顧客である受荷主、そして物流会社全体を巻き込んだ共同の取り組みをしなければ、予約の納品は成り立たない。そして同じ受け荷主を持つライバルのメーカー各社も、同じ枠組みで仕組みに乗るのでなければ、受荷主ごとにバラバラの仕組み・アプリが乱立することになってしまうからです。

「業界共同の、共通プラットフォーム」が必要なゆえんがここにあります。そこに集い、利害関係を乗り越えて、「販売は競争・物流は共同」という古くて新しいテーゼの現実化に向け、みんなで汗をかく――この泥臭い取り組みのうえで、初めてIoT/ICTの先端情報技術もその価値を発揮することができるのだと思います。

世の中全体でシェアリングへの関心が高まっている背景には、限りある地球資源の無駄遣いをそろそろ防がないと、絶対ヤバいことになる、という危機感が市民権を得てきたからでもあるでしょう。物流リソース不足の危機的状況は、より先鋭にこの課題を突き付けています。

「みんなで、全体での最適化」という「みんな」の範囲を一歩ずつ、広げること。物流・ロジスティクス・サプライチェーンの分野で、そのための「共同プラットフォーム」になろうと決意して一昨年に本格活動を開始したのが、以上に何度も触れている「日本マテリアルフロー研究センター」(JMFI)です。名だたる製販配・物流・マテハン・ICT/IoT企業が集い、間もなく会員数は100社に届くまでになりました。

そのものずばり、シェアリング・ロジスティクス研究会やバース予約システムの研究会も設置し、取り組みを開始しています。引き続き仲間の参加を募っており、ご興味あらば一度ホームページ( https://ryuken-jmfi.or.jp/ )をのぞいてみてください。

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