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【物流コラム】 物流危機の救世主? ロボティクスの可能性(後編)

2020/6/12 [物流,コラム]

長年、物流ロボットやマテハンの導入に関する取材記事を書いてきた「月刊マテリアルフロー」編集部による「物流危機の救世主? ロボティクスの可能性(後編)」と題したコラム。

目次

  • AMR/自立走行ロボット
  • 自動ピッキングロボット

AMR/自立走行ロボット

こちらはロボット、または進化系のAGV(Automatic Guided Vehicle ; AGV)、AGF(Automatic Guided Forklift)の範疇になるかと思いますが、パレットやコンテナを自律走行により自動搬送する、ロボットないしAGV/AGF(両者の違いは現在あいまい化しているので並列します)がAMRタイプに分類できます。

この概念は、搬送ロボットが、レーザセンサやビジョンシステムで自らデジタルマップを生成するSLAM制御方式などを活用し、各種センサを併用して、無軌道で安全走行ができ、人が作業するエリアにおいても協調する共同ロボットとして活躍するタイプを念頭に生まれたものです。

GTPロボットが柵で囲まれた自動化専用スペースに限定し人とは隔離された場所で稼働するのと異なり、AMRは人と同じスペースで動く共同ロボットであることが、大きな相違点です。つまり高度な安全機能が不可欠になるわけです。

AMRは基本、従来のカートピッキングで人がカートを押して移動していた作業、またはコンベヤを張り巡らして、多くのピッキング作業者をその周囲の棚間口に貼り付けていたピッキングスタイルに対し、カートやコンベヤをロボットに代替させる発想からスタートしています。ピッカーは担当する棚の数間口だけを行き来すればよいので、歩行は激減させられる。固定設備不要の「バーチャルコンベヤ」という視点が、考えのベースにあるのです。

だから工事が簡単で導入期間が短いメリットもある。ただしGTPタイプと同じく、自動搬送ロボットはまだまだ高価で、以前は「高級外車」並みであったのが、「国産高級車」クラスになってきたところに、中国メーカーなどが「国内大衆車」レベルで勝負をかけてきています。

写真3,4:人と共存する、きくや美松堂のAMR(月刊マテリアルフロー2018年11月号より引用)

AMRの導入事例は、国内の物流分野ではまだ限られます。その中で、美容室向け毛髪化粧品および美容機器等の専門商社である、きくや美粧堂の導入事例を取材しています。当初は一台をイレギュラー工程に試験導入、人が作業で行き交う狭い通路を早歩きの速度で走り、人がいれば過ぎるのを待ち、段差ではスピードを落としてスムーズに走行する様子はなかなかのもの(写真3,4)。最近2台目を導入して運用の高度化を進めています。

自動ピッキングロボット

最後に紹介したいのが、ケース+ピースの自動ピッキングロボットです。

生産工程では何十年も前から採用され、日本は世界に冠たるロボット大国でありました(今は中国にトップの座を譲っています)。それが可能だったのは、生産工程では決まったモノを決まった位置にハンドリングすればよいため、何週間も何か月もかけて人間がプログラミングすればよかったからです。

ところが物流現場では、次に何が来るのか決まっていない。メーカーならまだしも、何万品種もの商品を扱う卸以降の流通現場では、そのすべての単品商品ごとにプログラミングする、次々に投入される新商品にも対応することなど、不可能なこと。ではどうするのか。

人間のように、「眼」で見てその商品特性を瞬時に判断し、「頭」でつかみ方、運び方の動線を考え、「手」で確実に把持して出荷用の箱にやさしく入れ替える…しかしこの条件は従来、ロボットにとってあまりに厳しいものでした。

それが今やついに、最先端技術の進化により「眼」「脳」「手」を兼ね備えたロボットシステムが登場、実現可能な段階に突入しています。最近取材した事例では、日用雑貨卸大手のPALTACが最近本稼働させた、埼玉RDCの事例が出色です。

ケースピックにはデパレタイズ(KYOTO ROBOTICS)、パレタイズ(MUJIN)と2大ロボットコントロールシステムメーカーの技術を採用。さらに究極の技術、ピースピッキングには米Right Hand Robotics社の「RightPick」を採用し、チューブの歯磨きなどのつかみにくいモノも、時折考え直しトライを繰り返しながらではありますが、きっちりピックしていました。ピースピッキングロボットは、先端EC企業のアスクルも関西の拠点でいよいよ本格稼働に成功しています。

写真5,6:PALTACのケースピッキング(パレタイズ)ロボットと
ピースピッキングロボット(月刊マテリアルフロー2019年11月号より引用)

以上のように、一昔前まで夢物語・SFの世界であった物流の完全自動化が、現実目標レベルに降りてきました。ただし、こうなるとDX時代の物流が「装置産業化」し、資本力のある企業だけが勝ち残るのではないか、との危惧があります。コスト負担力の低い食品などの流通過程ではどうなのか。資本力のない中小企業はどうしたらよいのか?

これらに対しては「シェアリング・共同化でまとまって高度なシステムを採用する」「レンタル・リース」「月額制やサブスクリプション方式」「従量課金制」などのサービスが次々に立ち上がりつつあるのが、期待ポイントになるでしょう。日本の物流が止まってしまう前に、課題を乗り越えるしかありませんね。

月刊マテリアルフロー7月号

月刊マテリアルフロー 編集部

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