2024年2月、大手パン工場でアルバイトの女性が作業中にコンベアーに巻き込まれ亡くなるという大事故が発生しました。報道では詳細が不明ですが、あなたの工場では、他の工場で起きた労災事故を受け、朝礼での注意喚起や工場全体での確認作業を実施していますか。
他の工場や他業種の事故情報を自社の工場に役立てることを「他山の石」と言います。
「他山の石」の対義語は、「対岸の火事」です。「対岸の火事」は文字通り自分には火の粉が飛んで来ない対岸から見ている火事で、「ばかだな、事故を起こして」と他人事のように感じている態度のことです。
コンベアーの事故を受けて、朝礼で確認すべきことは、作業着が巻き込まれないように、ネクタイやストラップなどを着用していないか、もし着用しているのであれば、巻き込まれた時外れるものになっているかなどです。コンベアーに手を入れることができる隙間がないか、むき出しのチェーンがないかを直ちに点検する必要があります。
大きな死亡事故が起こる前には、小さな事故が何度も起きているはずです。新潟で死亡者が出た火災事故でも、小さなボヤが何度も発生していたと報道されています。小さな事故が発生したときは、再発防止策を徹底し、その防止策が全従業員に伝わっているかを確認する必要があります。
例えば、作業場で転倒事故が発生したとします。転倒した人の長靴が滑り止めが効かないほどすり減っていたと仮定します。朝礼で「作業靴がすり減ったら交換すること」を伝えるだけでなく、毎週月曜日の朝礼時に作業靴の裏を確認し、作業終了後には作業靴の裏が見えるように保管するなど、誰もがすり減っていないか確認できるようにし、ルール違反や危ないと思った時に気付き、声を上げられる環境を作ることが重要です。
労災を防ぐためには、従業員全員が危険箇所や危険行為に気がついた時に、声を上げられる環境作りが大切なのです。たとえ上司が「このくらい大丈夫」と言ったとしても、「私は危ないと思います」と言える企業風土にすべきなのです。
・安全管理の考え方
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食品安全教育研究所 代表 1958年1月北海道生まれ。帯広畜産大学を卒業後、農場から食卓までの品質管理を実践中。これまでに経験した品質管理業務は、養鶏場、食肉処理場、ハムソーセージ工場、餃子・シュウマイ工場、コンビニエンスストア向け総菜工場、玉子加工品工場、配送流通センター、スーパーマーケット厨房衛生管理など多数。毎年100箇所以上の食品工場点検、教育を行っている。 |
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