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【食品工場長向けコラム】 新工場を設計するときに注意すること 〜設計段階で将来を見据えること〜

2025/9/26 [食品,コラム]

今回の食品工場長向けコラムは「新工場を設計するときに注意すること 〜設計段階で将来を見据えること〜」と題して、新工場が長期的な競争力を維持するために設計段階で考えておくべきポイントについてお話します。

私は新工場の設計相談を受けたときに、必ず工場責任者に「新工場は何年使用する予定ですか」と質問します。

20年なのか、30年なのか、それとも50年なのか。使用予定年数によって、設計の考え方が根本的に変わってくるからです。

30年後の生産能力を想定しているか

「30年後の売上目標はいくらですか」私は、必ず質問します。
多くの責任者は、来年、再来年の目標は答えられますが、30年後の具体的な数値目標を持っている方は少ないのが現状です。

しかし、新工場を建設するのであれば、30年後の生産能力、従業員数、一人一時間当たりの生産性まで明確にしておくべきです。特に、平均時給をいくらで考えているかが大切になります。

建設後に「手狭になったから増築を」では、効率的な工場運営は困難になります。
将来の拡張を見込んだ設計こそが、長期的な競争力を支えるのです。

新工場の計画

食品安全基準の変化を予測しているか

HACCP、ISO22000など、食品安全の基準は年々厳しくなっています。
現在の基準だけで設計していては、5年後、10年後に大規模な改修が必要になる可能性があります。

新工場では、将来の規制強化を見据えた設計が不可欠です。排水処理能力の余裕、清浄度区分の明確化、トレーサビリティシステムの導入スペースなど、「今は不要でも将来必要になる」要素を織り込んでおくことが重要です。

自動化・デジタル化への対応を考えているか

私が工場を訪問すると、「人手不足で困っている」という声を頻繁に聞きます。
30年後の労働人口減少を考えれば、自動化は避けて通れません。

新工場の設計段階で、ロボット導入のためのスペース確保、電源容量の余裕、通信インフラの整備を行うべきです。「後からでも」という考えでは、結果的に高コストな改修を強いられることになります。

IoTセンサーによる品質管理、AI活用の生産計画など、デジタル技術の進歩も設計に反映させる必要があります。

環境対応・省エネルギー設計になっているか

カーボンニュートラル、脱炭素社会への対応は、もはや選択肢ではありません。
新工場では、太陽光発電設備の設置スペース、蓄電池の設置場所、省エネルギー設備の導入を最初から計画に組み込むことが必要です。

また、将来の電力料金上昇、環境税導入を考慮すれば、初期投資が多少高額になっても、長期的にはコスト削減につながる設計を選択すべきです。

従業員の働きやすさを重視しているか

優秀な人材を確保し続けるためには、働きやすい環境づくりが欠かせません。
休憩室、更衣室、食堂の充実はもちろん、自然光の取り入れ、適切な空調設計、騒音対策など、従業員の健康と働きがいを考慮した設計が重要です。

あなたは、新工場の30年後の姿を明確に描けていますか。

新工場の設計段階で見据えておくべきチェックポイント

  • 30年後の生産能力を明確にしているか
  • 自動化・デジタル化への対応を織り込んでいるか
  • 従業員の働きやすさを重視した設計になっているか

食品工場長向けコラムの記事一覧

・新工場を設計するときに注意すること 〜設計段階で将来を見据えること〜

将来の計画を立てているか 〜責任者は常に将来を考えること〜

朝一番確認する数値について 〜自動で集計されること〜

工場改善の目標値を達成するために 〜毎日の記録が大切〜

トラブル時の帳票類の確認について

異物クレームを減らすために

工場改善の目標値はなにか 〜帳票を記帳する目的は〜

ICタグの利用について 〜危機管理、生産性管理での利用〜

更にクレームを減らすために 〜従業員教育のいらない管理〜

クレーム要因の区分 〜特性要因図の作成〜

クレームを更に減らすために

クレームの要因分析

災害時の対応について

安全管理の考え方

プリメンテナンスの考え方

製造委託先の帳票管理について

入り数不足を無くするために

帳票に頼らない管理

知識の共有化について

包装フイルムのつなぎ方について

食品工場の工場長の仕事とは 〜常に改善を求める姿勢が大切〜

間接部門の合理化について 〜生産管理部門の省人化〜

原材料欠品防止について 〜原料庫の「見える化」〜

原材料管理について 〜適切な在庫の取り方〜

生産設備のデーターのバックアップ 〜停電してもデーターが残るか〜

原料から最終商品への紐がつながるか 〜原材料、包装資材に問題があったら〜

問い合わせ電話の対応 〜専用電話で確認できること〜

防火管理の必要性 〜自動消火装置の設置が必要〜

カミナリ対策に無停電装置が有効

生産帳票の確認について 〜出荷判定を確実に〜

設備のバックアップについて 〜欠品を防ぐために〜

データの流出防止 〜パソコンなどの持ち出しを許可しているか〜

ICカードの利用 〜生産性向上、歩留り向上のために〜

アンテナを高く 〜最新の情報を集め、活用しているか〜

不審者対策ができているか 〜大阪放火事件から学ぶこと〜

ICチップカードの利用について 〜入場していい作業場かどうか〜

帳票の管理について、クレーム発生時にすぐに確認ができるか

現場で手書きの表示は行わない

帳票は毎日印刷すること

トレースバックできる仕組み作り

地域からの苦情の受付について

個人情報の取り扱いについて

危機管理センターの備えておくべき電気設備

危機管理センターの備えておくべき通信設備

危機管理センターという考え方

虫対策の必要性

殺菌の必要な設備の設計

こんな新設備の提案がほしい

ネット上の情報を確認していますか

ミス失敗の図書館が必要

安全衛生点検の必要性 〜転倒事故を防ぐために〜

コールセンターの必要性 〜違反の笛を吹くために〜

AI等の設備投資

食堂もキャッシュレスに。食品工場内のICカードの利用のすすめ

天災時には従業員との連絡を最優先で行うこと

通勤時の荷物について

清掃が工場管理の基本の基本 工場長の机は磨き込んでいますか

従業員満足を考えていますか

地域の方からいい会社と言われるために

生産性を上げるために、自分の設備と思える設備管理を

バイトテロを防ぐ従業員教育

残業の管理をどうすべきか

有給取得率を把握していますか

食品安全教育研究所 代表
河岸 宏和 氏

1958年1月北海道生まれ。帯広畜産大学を卒業後、農場から食卓までの品質管理を実践中。これまでに経験した品質管理業務は、養鶏場、食肉処理場、ハムソーセージ工場、餃子・シュウマイ工場、コンビニエンスストア向け総菜工場、玉子加工品工場、配送流通センター、スーパーマーケット厨房衛生管理など多数。毎年100箇所以上の食品工場点検、教育を行っている。
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