「どんな事が一番聞きたいですか」とセミナー依頼に対して質問すると、「毛髪混入防止」と言われます。食品工場において毛髪混入を防ぐことは永遠の課題であり、最終工程で検出できる検出機械が存在しない以上、従業員教育と日常管理が最も重要となります。特に毛髪は小さく軽いため、工場内に持ち込まない、落とさないという意識づけが不可欠です。
まず基本となるのは個人衛生の徹底です。従業員には毎日の洗髪を習慣化させ、床屋で髪を切った後も必ず洗髪してから出勤させるよう教育します。また、ブラッシングや服装の制限も必要です。ファーや毛糸製品は毛髪に見える異物の原因となるため着用を禁止し、必要に応じて工場側で下着などを支給することも効果的です。さらに、体毛管理にも注意が求められ、袖のない下着や短靴の使用は体毛落下につながるため避けるべきです。化粧やつけまつげも異物混入のリスクがあるため、ルールを設けることが望まれます。
次に、工場への入場ルールが重要です。工場は必ず作業着に着替えてから入場できる構造とし、私服の段階で粘着ローラーをかけることを教育します。ローラーがけは「時間をかけて確実に行う」ことが大切であり、60秒を目安にタイマーを活用すると効果的です。粘着シートは一人一枚を基本とし、使用前に剥がすルールを徹底することで、うっかりミスを防止できます。
また、更衣とタイムカードの関係も教育の一環です。本来、更衣や衛生管理の時間は就業時間に含めるべきであり、従業員が安心して十分なローラーがけや手洗いを行える仕組みを整える必要があります。作業着を着たまま建物外に出ることは厳禁であり、この基本を守らせることが混入防止の第一歩です。
最後に、教育は一度きりではなく継続的に行うことが重要です。ビデオ教材やマニュアルを用意し、新人教育に活用するとともに、現場で従業員同士が注意し合える風土を育てることが求められます。ルールを守らない場合はその場で是正できる文化を作ることで、組織全体の意識が高まります。
結局のところ、毛髪混入防止は工場責任者の意識と熱意に大きく左右されます。従業員に日常の行動から注意を促し、具体的なルールを明確に示し続けることこそが、食品工場の品質管理を支える教育の核心なのです。
・食品工場で働く方の新人教育について
・新工場を設計するときに注意すること 〜設計段階で将来を見据えること〜
・将来の計画を立てているか 〜責任者は常に将来を考えること〜
・食品工場の工場長の仕事とは 〜常に改善を求める姿勢が大切〜
・生産設備のデーターのバックアップ 〜停電してもデーターが残るか〜
・原料から最終商品への紐がつながるか 〜原材料、包装資材に問題があったら〜
・データの流出防止 〜パソコンなどの持ち出しを許可しているか〜
・ICチップカードの利用について 〜入場していい作業場かどうか〜
・食堂もキャッシュレスに。食品工場内のICカードの利用のすすめ
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食品安全教育研究所 代表 1958年1月北海道生まれ。帯広畜産大学を卒業後、農場から食卓までの品質管理を実践中。これまでに経験した品質管理業務は、養鶏場、食肉処理場、ハムソーセージ工場、餃子・シュウマイ工場、コンビニエンスストア向け総菜工場、玉子加工品工場、配送流通センター、スーパーマーケット厨房衛生管理など多数。毎年100箇所以上の食品工場点検、教育を行っている。 |
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