HOME > 情報システム分野 > IT レポート > 食品工場で働く方の新人教育について

【食品工場長向けコラム】 食品工場で働く方の新人教育について

2025/11/5 [食品,コラム]

今回の食品工場長向けコラムは「食品工場で働く方の新人教育について」と題して、食品工場の品質管理を支えるためには新人教育や現場で従業員同士が注意し合える風土づくりが重要であるということについてお話します。

「どんな事が一番聞きたいですか」とセミナー依頼に対して質問すると、「毛髪混入防止」と言われます。食品工場において毛髪混入を防ぐことは永遠の課題であり、最終工程で検出できる検出機械が存在しない以上、従業員教育と日常管理が最も重要となります。特に毛髪は小さく軽いため、工場内に持ち込まない、落とさないという意識づけが不可欠です。

まず基本となるのは個人衛生の徹底です。従業員には毎日の洗髪を習慣化させ、床屋で髪を切った後も必ず洗髪してから出勤させるよう教育します。また、ブラッシングや服装の制限も必要です。ファーや毛糸製品は毛髪に見える異物の原因となるため着用を禁止し、必要に応じて工場側で下着などを支給することも効果的です。さらに、体毛管理にも注意が求められ、袖のない下着や短靴の使用は体毛落下につながるため避けるべきです。化粧やつけまつげも異物混入のリスクがあるため、ルールを設けることが望まれます。

次に、工場への入場ルールが重要です。工場は必ず作業着に着替えてから入場できる構造とし、私服の段階で粘着ローラーをかけることを教育します。ローラーがけは「時間をかけて確実に行う」ことが大切であり、60秒を目安にタイマーを活用すると効果的です。粘着シートは一人一枚を基本とし、使用前に剥がすルールを徹底することで、うっかりミスを防止できます。

また、更衣とタイムカードの関係も教育の一環です。本来、更衣や衛生管理の時間は就業時間に含めるべきであり、従業員が安心して十分なローラーがけや手洗いを行える仕組みを整える必要があります。作業着を着たまま建物外に出ることは厳禁であり、この基本を守らせることが混入防止の第一歩です。

最後に、教育は一度きりではなく継続的に行うことが重要です。ビデオ教材やマニュアルを用意し、新人教育に活用するとともに、現場で従業員同士が注意し合える風土を育てることが求められます。ルールを守らない場合はその場で是正できる文化を作ることで、組織全体の意識が高まります。

結局のところ、毛髪混入防止は工場責任者の意識と熱意に大きく左右されます。従業員に日常の行動から注意を促し、具体的なルールを明確に示し続けることこそが、食品工場の品質管理を支える教育の核心なのです。

新人教育のポイント

食品工場の品質管理を支えるためのチェックポイント

  • 従業員教育用のビデオが準備できているか
  • 作業着の着用方法などのルールが明確になっているか
  • ルールと異なる方法を行っている方に、注意する風土があるか

食品工場長向けコラムの記事一覧

・食品工場で働く方の新人教育について

新工場を設計するときに注意すること 〜設計段階で将来を見据えること〜

将来の計画を立てているか 〜責任者は常に将来を考えること〜

朝一番確認する数値について 〜自動で集計されること〜

工場改善の目標値を達成するために 〜毎日の記録が大切〜

トラブル時の帳票類の確認について

異物クレームを減らすために

工場改善の目標値はなにか 〜帳票を記帳する目的は〜

ICタグの利用について 〜危機管理、生産性管理での利用〜

更にクレームを減らすために 〜従業員教育のいらない管理〜

クレーム要因の区分 〜特性要因図の作成〜

クレームを更に減らすために

クレームの要因分析

災害時の対応について

安全管理の考え方

プリメンテナンスの考え方

製造委託先の帳票管理について

入り数不足を無くするために

帳票に頼らない管理

知識の共有化について

包装フイルムのつなぎ方について

食品工場の工場長の仕事とは 〜常に改善を求める姿勢が大切〜

間接部門の合理化について 〜生産管理部門の省人化〜

原材料欠品防止について 〜原料庫の「見える化」〜

原材料管理について 〜適切な在庫の取り方〜

生産設備のデーターのバックアップ 〜停電してもデーターが残るか〜

原料から最終商品への紐がつながるか 〜原材料、包装資材に問題があったら〜

問い合わせ電話の対応 〜専用電話で確認できること〜

防火管理の必要性 〜自動消火装置の設置が必要〜

カミナリ対策に無停電装置が有効

生産帳票の確認について 〜出荷判定を確実に〜

設備のバックアップについて 〜欠品を防ぐために〜

データの流出防止 〜パソコンなどの持ち出しを許可しているか〜

ICカードの利用 〜生産性向上、歩留り向上のために〜

アンテナを高く 〜最新の情報を集め、活用しているか〜

不審者対策ができているか 〜大阪放火事件から学ぶこと〜

ICチップカードの利用について 〜入場していい作業場かどうか〜

帳票の管理について、クレーム発生時にすぐに確認ができるか

現場で手書きの表示は行わない

帳票は毎日印刷すること

トレースバックできる仕組み作り

地域からの苦情の受付について

個人情報の取り扱いについて

危機管理センターの備えておくべき電気設備

危機管理センターの備えておくべき通信設備

危機管理センターという考え方

虫対策の必要性

殺菌の必要な設備の設計

こんな新設備の提案がほしい

ネット上の情報を確認していますか

ミス失敗の図書館が必要

安全衛生点検の必要性 〜転倒事故を防ぐために〜

コールセンターの必要性 〜違反の笛を吹くために〜

AI等の設備投資

食堂もキャッシュレスに。食品工場内のICカードの利用のすすめ

天災時には従業員との連絡を最優先で行うこと

通勤時の荷物について

清掃が工場管理の基本の基本 工場長の机は磨き込んでいますか

従業員満足を考えていますか

地域の方からいい会社と言われるために

生産性を上げるために、自分の設備と思える設備管理を

バイトテロを防ぐ従業員教育

残業の管理をどうすべきか

有給取得率を把握していますか

食品安全教育研究所 代表
河岸 宏和 氏

1958年1月北海道生まれ。帯広畜産大学を卒業後、農場から食卓までの品質管理を実践中。これまでに経験した品質管理業務は、養鶏場、食肉処理場、ハムソーセージ工場、餃子・シュウマイ工場、コンビニエンスストア向け総菜工場、玉子加工品工場、配送流通センター、スーパーマーケット厨房衛生管理など多数。毎年100箇所以上の食品工場点検、教育を行っている。
ホームページ「食品工場の工場長の仕事とは」主催
メールマガジン「食品工場の工場長の仕事」を発行中
最新刊「最新版 ビジュアル図解 食品工場のしくみ」では、食品をめぐる問題が様々な形で話題になっている昨今、興味の高まる食品工場の品質管理や安全管理から、衛生管理、原材料管理、流通、商品開発などまで、わかりやすく解説する。

食品業の経営者・マネージャーの皆さまへ

pagetop