HOME > 情報システム分野 > IT レポート > どこまでバックアップを考えるか

【食品工場長向けコラム】 どこまでバックアップを考えるか

2026/2/12 [食品,コラム]

今回の食品工場長向けコラムは「どこまでバックアップを考えるか」と題して、いざというときに“いつでも元に戻せる仕組み”を整えることの重要性についてお話しします。

ランサムウェアによる被害が後を絶たず、食品工場や物流拠点が受発注を行えなくなり、生産計画が完全に停止するというニュースが続いています。ある工場では、システム復旧に3ヶ月以上かかり、その間、紙と電話による受注対応に追われ、取引先からの信用も大きく揺らぎました。「バックアップがあったはずなのに復旧できなかった」という声も少なくありません。では、何が問題だったのでしょうか。

このテーマを理解するには、まず 日常的に使っている個人用のスマホのバックアップを例に考えるのがわかりやすいと思います。
多くの人が「スマホには大事な情報はない」「クラウドに保存してあるので安心」と言います。しかし、スマホの真の価値は、端末そのものではなく、そこに保存された“復元すべき情報”です。

たとえば、大分のマンション火災や香港の高層タワーマンション火災のように、着の身着のままで避難したケースを想像してください。スマホも手帳も持ち出せず、その後、同じ機種のスマホを購入したとします。ここで問題となるのは、「新品スマホを手に入れた瞬間、以前と同じ状態に戻せるかどうか」です。

その際、以下のような障害に直面する可能性があります。

・クラウドにアクセスできない状況
 災害時は通信インフラが不安定で、バックアップを取り戻せない可能性があります。

・二段階認証でログインできない問題
 最近は銀行アプリ、SNS、クラウドサービスなどほぼすべてが二段階認証を採用しています。
 しかし、その認証コードの受け取り先が“失ったスマホ”になっていることも多いのです。

・バックアップコードをどこにも保存していない
 ログイン不能となり、バックアップが存在していても、取り出せないケースが実際に増えています。

さらに、スマホとパソコンのバックアップを 同じ場所(自宅)に保管している人がほとんどです。
火災や水害、盗難などが起きた場合、同時に失われるリスクが高まります。
これは工場のデータ管理でも同じで、「メインシステムもバックアップも社内の同じ建物にあったため、両方失った」という事例が実際に起きています。

近年はスマホに依存する情報量も飛躍的に増えています。 キャッシュレス決済や銀行アプリのデータ、マイナンバーのデジタル情報、健康アプリ、家族とのメッセージ履歴、業務アプリ、写真やメモなど、これらをすべて失ったとき、日常の生活だけでなく仕事にも直接の影響が出ます。

では、どう備えればよいのでしょうか。

■個人レベルで行うべきバックアップの基本

1. クラウドとローカルの二重バックアップ

クラウドは便利ですが、障害や認証不能のリスクがあります。
可能なら、スマホのバックアップをパソコンへ、パソコンのデータを外付けSSDへ、というように階層的な保存が必要です。

2. バックアップを“別の場所”に置く

工場のデータ管理では「遠隔地バックアップ」が常識ですが、個人ではほとんど行われていません。
自宅とは別の場所、例えば、職場のロッカー、実家など、火災や水害で同時に失われない場所に保管するだけで、復旧可能性は大幅に向上します。

3. 二段階認証の“バックアップコードを”紙で保管する

最も効果的で現実的な方法です。
認証アプリを失っても、紙のコードがあれば全サービスにログインできます。
災害時はインターネットが不安定になるため、紙媒体が最も強いのです。

4. 「復元手順」を一度だけでも試す

実際に古いスマホを使って復旧テストをした企業では、想像以上に多くのログイン障害が発生したと言います。
「できると思っていたことが、実はできていなかった」ということが極めて多いのです。
スマホの備えを見直すことは、工場全体のリスク管理を考える最初の一歩になります。

バックアップとは単なる保存作業ではありません。
“いつでも元に戻せる仕組み”を整えて初めてバックアップは意味を持ちます。

どこまでバックアップを考えるか

いざという時に困らないバックアップのチェックポイント

  • 「データがある」ではなく「復元できるか」
  • 「保存している」ではなく「別場所にもあるか」
  • 「クラウドにあるから安心」ではなく「クラウドに入れない時どうするか」

食品工場長向けコラムの記事一覧

食品安全教育研究所 代表
河岸 宏和 氏

1958年1月北海道生まれ。帯広畜産大学を卒業後、農場から食卓までの品質管理を実践中。これまでに経験した品質管理業務は、養鶏場、食肉処理場、ハムソーセージ工場、餃子・シュウマイ工場、コンビニエンスストア向け総菜工場、玉子加工品工場、配送流通センター、スーパーマーケット厨房衛生管理など多数。毎年100箇所以上の食品工場点検、教育を行っている。
ホームページ「食品工場の工場長の仕事とは」主催
メールマガジン「食品工場の工場長の仕事」を発行中
最新刊「最新版 ビジュアル図解 食品工場のしくみ」では、食品をめぐる問題が様々な形で話題になっている昨今、興味の高まる食品工場の品質管理や安全管理から、衛生管理、原材料管理、流通、商品開発などまで、わかりやすく解説する。

ビジネスDXフェア2026

食品業の経営者・マネージャーの皆さまへ

pagetop