食品工場における情報漏えい対策は、IT部門や本社任せでは不十分です。実際に従業員と現場を動かしている工場長の判断と姿勢が、データを守れるかどうかを大きく左右します。
レシピ、原料配合、製造条件、取引先情報、従業員名簿、クレーム・事故記録などは、外部に流出すれば工場の信用を一瞬で失わせる重要情報です。
内部からの情報漏えいの多くは、悪意よりも「油断」「慣れ」「善意の判断」から起きます。工場長が「急ぎだから仕方ない」「現場が回らないから」と例外を認めてしまうと、それは現場全体へのメッセージとなり、ルールは形骸化します。工場長は、例外を作らない存在でなければなりません。
私の経験でも、「私物のスマホを事務所のパソコンに接続して充電している」、「家で資料を作るからUSBメモリでデータを持ち出す」、「自宅で仕事したいので、添付メールでデータを送付する」などの例を多く見てきています。
また、データ管理は「監視」ではなく「事故防止」です。従業員を疑う姿勢ではなく、「仕組みで守る」ことが重要です。悪さを行おうとしている方でも、仕組みで出来ないようにすべきです。そのためには、ルールを作り、その上で日常の確認と点検が欠かせません。
工場長は、下記の項目を確認すべきです。
1.工場内の重要データの種類を把握しているか
2.業務に不要なアクセス権が残っていないか
3.異動・退職者のアカウント停止が即日行われているか
4.USBメモリや私物機器の接続を禁止しているか
5.データ持ち出し、メールでの送付を禁止しているか
6.アクセスログ・操作履歴を定期的に確認しているか
7.管理職自身がルールを守る行動を取っているか
8.不満や異変を感じる従業員に目を向けているか
9.情報管理教育を定期的に実施しているか
10.事故発生時の報告・対応手順を理解しているか
工場長は、製造量や品質だけでなく、「情報」という見えない資産を守る責任者です。データ事故は一度起きれば取り戻せません。だからこそ、事故が起きない状態を作ることが工場長の仕事です。
ルールを作り、守らせ、そして自ら守る。その積み重ねが、工場の信用を守り、従業員とその家族の生活を守ることにつながります。工場長の意識と行動が、工場の未来を決めることを忘れてはいけません。
・食品工場長が果たすべき「データ管理」の責任 ― 内部不正を防ぐために現場で見るべきポイント ―
・新工場を設計するときに注意すること 〜設計段階で将来を見据えること〜
・将来の計画を立てているか 〜責任者は常に将来を考えること〜
・食品工場の工場長の仕事とは 〜常に改善を求める姿勢が大切〜
・生産設備のデーターのバックアップ 〜停電してもデーターが残るか〜
・原料から最終商品への紐がつながるか 〜原材料、包装資材に問題があったら〜
・データの流出防止 〜パソコンなどの持ち出しを許可しているか〜
・ICチップカードの利用について 〜入場していい作業場かどうか〜
・食堂もキャッシュレスに。食品工場内のICカードの利用のすすめ
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食品安全教育研究所 代表 1958年1月北海道生まれ。帯広畜産大学を卒業後、農場から食卓までの品質管理を実践中。これまでに経験した品質管理業務は、養鶏場、食肉処理場、ハムソーセージ工場、餃子・シュウマイ工場、コンビニエンスストア向け総菜工場、玉子加工品工場、配送流通センター、スーパーマーケット厨房衛生管理など多数。毎年100箇所以上の食品工場点検、教育を行っている。 |
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